少子高齢化が進む現代、子育てや介護をしながら仕事もしなければならない…そんな状態に誰がなってもおかしくありません。
育児・介護と仕事の両立が必要になる前に知っておきたいのが「育児・介護休業法」。
この記事では制度のポイントや対象者、取得できる給付金などについて解説していきます。
必要になる前に、どんな働き方が可能なのか?を知っておけば、いざ両立を迫られた時にも、慌てずに対処することができますよ。
なお、この記事内に記載している条件や日付、年齢などはすべて厚生労働省のホームページを参考にしています(2020年11月現在)
育児介護休業法って何?
育児介護休業方とは、育児や介護をしながら働き続けることができるように国が支援する制度です。
2017年1月に発足されて以来、仕事と育児を両立するために様々な休業休暇制度や給付金制度、短時間勤務制度などが労働者を支えています。
また、労働者が育児や介護のために休暇・休業が必要と申請した場合の、事業主の対応義務などもあわせて制定されました。
これにより、労働者が仕事と家庭を両立する権利はますます守られるようになりました。
育児介護休業法の対象になるのは誰?
育児介護休業法、それぞれ対象になるのは以下の条件を満たしている人です。
- 就学前の子供を養育している男女の労働者(育児休業の場合)
- 2週間以上にわたり常時介護が必要な状態の家族がいる労働者(介護休業の場合)
ただし、上記の条件を満たしていても、以下のような人は対象から除外されるので注意が必要です。
日雇い労働者
雇用されてから1年未満
休業中に退職することが決定している
1週間の労働日数が2日以内
なお、パートやアルバイト、契約社員など正社員でなくても、1年以上の雇用実績があり、休業終了後も引き続き勤務することが明らかな場合は休業、及び給付金を取得することができます。
育児介護休業法の制度内容について
ここでは、育児介護休業法で定められている制度の内容を、育児と介護に分けてそれぞれ解説していきます。
育児をするパパママが利用できる制度
育児休業中、仕事ができないから給与がもらえない…そんな事態を防ぐために定められたのが、育児休業とそれに伴う育児休業給付金制度です。
また、育児休業とは別に子供の体調不良の際に休むことができる看護休暇も育児をする労働者の権利として定められています。
育児休業制度
子供が1歳になる誕生日まで、育児のために休業することができる制度です。
子供がいる男女共に取得することができるだけでなく、夫婦が同時に取得することも可能です。
夫婦で取得する場合は、子が1歳2ヵ月になるまで取得できる「パパママ育休プラス制度」や、パパが2回育児休暇を取得できる「パパ休暇」を利用することもできます。
子供1人につき原則として1回取得することが可能です。
育児休業給付金制度
育児休業中は仕事ができないため、当然給与は支払われません。
その代わり、雇用保険組合(公務員の場合は共済組合)が給料の一部を給付してくれます。それが育児休業給付金制度です。
所得制限はありますが、原則給与の5割から7割程度が支払われます。
子供の看護休暇(1人につき年5日)
子供の看病、もしくは予防接種や健康診断など、子供の健康上の理由で休暇を取得できる制度です。
休暇は半日単位で取ることができるため、最大10回取得することができます。
なお、子供が2人以上いる場合は年10日取得することが可能です。
有給扱いになるかどうかは企業によって異なるので、勤め先に確認しておきましょう。
家族の介護をする労働者が利用できる制度
家族の介護のために仕事を辞めざるを得ない、そんな労働者を救うために定められたのが介護休業と、それに伴う介護休業給付金制度です。
介護休業取得制度
要介護状態(ケガ、病気、精神上の理由によって2週間以上の期間、常に介護が必要な状態)の家族を介護するために休業することができる制度です。
対象家族一人につき、最長93日まで取得することができ、最大3回に分けて分割取得することもできます。
介護休業給付金制度
労働者が介護休業を取得中、雇用保険に加入している労働者は給与の代わりに給付金を受け取ることができる制度です。
休業中は「休業日数×給与の日割り分×67%」の給付金を受け取ることができます。
なお、育児休業給付金と異なり、介護休業給付金は介護休業を終えてから申請します。
介護休業中は支払われないので注意しましょう。
介護休暇(1人につき年5日)
病院の付き添いやリハビリなど、介護が必要な家族に付き添うために休暇を取得できる制度です。
育児の看護休暇と同じく半日単位で取ることができるため、最大10回取得することができます。
また、介護対象者が2人以上の場合は介護休暇を10日取得することができます。
なお、介護休暇が有給扱いになるかどうかは企業によって異なります。
育児・介護どちらの場合でも適応される制度
育児・介護どちらの場合でも適用される制度に、時間外・所定外・深夜帯の労働制限があります。
3歳未満の子供がいる労働者、もしくは要介護状態の家族がいる労働者から申請をすると
- 1ヵ月以上1年以内の間、残業が免除
さらに、子供が3歳以上になっても、就学前であれば
- 1ヵ月24時間、1年間150時間を超える時間外労働が制限
- 1ヶ月以上6ヶ月以内の間、午後10時~午前5時の就労が制限
といった制度が適用されます。
「介護が必要な家族」はどこまで?同居していなくてもいい?
介護休暇、介護休業の対象となる家族は、
ポイント
配偶者(事実上の婚姻関係と同様の者も含む)
子供
孫
労働者本人の両親
労働者本人の祖父母
労働者本人の兄弟
配偶者の両親
となります。
逆に、
ポイント
配偶者の祖父母
配偶者の兄弟
などは介護休業の対象にはなりません。
また、介護対象の相手は同居していなくても制度を受けることができます。
育児休業と介護休業は同時取得は可能?
晩婚化、高齢出産が多い昨今、育児と介護を同時期にしなければならない家庭も少なくないでしょう。
しかし、残念ながら育児休業と介護休業は同時に取得することができません。
例として、育児休業中に介護休業も取得した場合、介護休業の開始日の前日をもって育児休業は終了し、育児休業給付金の支給対象から外れてしまいます。
育児・介護どちらも利用できる!短時間勤務制度とは
育児介護休業法が取り入れられたことにより企業側の義務となった短時間勤務制度。
労働者が育児・介護と仕事を両立させるために定められたこの制度が、どのようなものなのか見ていきましょう。
短時間勤務制度の内容
1日の所定労働時間を短くする制度です。
フルタイム勤務と呼ばれている1日8時間労働を、
退勤時間を2時間早める
出勤時間を1時間遅くし、退勤時間を1時間早める
などの方法で、1日6時間労働に変更する方法が一般的です。
他にも、
フルタイム勤務のまま、週の労働回数を減らす(フルタイムで週3日勤務)
労働時間、週の労働回数共に減らす(7時間で週3日勤務)
といった方法もあります。
短時間勤務制度の対象となる労働者
時短勤務制度を利用するためには、条件があり、基本的に全て満たしている必要があります。
満たしているべき条件は以下の通りです。
育児のため、短時間勤務制度の対象となる労働者
- 1. 3歳未満の子供を養育していること
- 2. 1日の所定労働時間が6時間以上であること
- 3. 日雇い労働者ではないこと
- 4. 短時間勤務制度適用中に、育児休業を取得していないこと
- 5. 労使協定により適用除外された労働者ではないこと
介護のため、短時間勤務制度の対象となる労働者
- 1. 要介護状態の家族がいること
- 2. 日雇い労働者ではないこと
- 3. 労使協定により適用除外された労働者ではないこと
労使協定によって適用除外された労働者とは、育児介護休業法の適用除外者と同じく
- 日雇い労働者
- 雇用されてから1年未満
- 休業中に退職することが決定している
- 1週間の労働日数が2日以内
となります。
短時間勤務が適用される期間
短時間勤務は適用される期間が決まっており、育児中か介護中かによって期間は変わります。
ここでは、それぞれ適用される期間について説明します。
育児中の短時間勤務は基本的に子供が3歳になるまで
短時間勤務の対象者になるための条件として「3歳未満の子供を養育していること」というのがあります。
つまり、3歳の誕生日を迎えてしまうと時短勤務の期間対象外になってしまうということです。
ただし、会社によっては「就学するまで」「子供が複数いる場合は3歳以降も可」など、独自のルールを設けている場合もあります。
介護中の短時間勤務は、基本的に制限なし
介護の場合、利用期間は「短時間勤務を取得した日から連続して3年以上の期間」与えることが事業主側に義務付けられています。
また、取得回数も特に制限がないので、いつまで短時間勤務を続けられるかは会社次第、ということになります。
短時間勤務制度の手続
短時間勤務制度の手続きは、事業主を通して行います。
特に申請する期間について明確には定められていませんが、仕事の引継ぎや部署内への周知を考えると1ヵ月前までには遅くとも手続きをしておきたいところです。
まとめ
育児介護休業法とは、労働者が育児及び介護と仕事をより両立しやすくするために定められた制度です。
条件を満たしていれば男女問わず利用することができ、休業中も給付金を受け取ることができるため、安心して子育てや介護に専念することができます。
また、短時間勤務制度や育児・介護休暇を取得できるなど、職場に復帰した後も様々なサポートを利用しながら可能な限り家庭と仕事を両立させることが可能です。
これらの制度は事業主に義務化されており、条件さえ満たしていれば正社員に限らず、パート・アルバイトでも取得が可能です。
育児や介護など家庭のことと仕事はなかなか両立させづらいことも多くありますが、こういったサポート制度を利用しながら、より良い自分の理想の働き方、生き方を見つけてみて下さい。