発達障害は、身体的な障害ではありませんが、日常生活が困難であるケースが多い障害です。
子供が行政のサポートを受けるため、保護者は障害者手帳の取得を考える場合もあるでしょう。
身体的な障害のない発達障害では、障害者手帳は取得できるのでしょうか?
取得できるとしたらどんな手帳なのか、取得する条件や取得方法など、発達障害で受けられる手帳について解説します。
発達障害の子供が取得できる障害者手帳は?
障害がある人が取得できる手帳は3つです。
ポイント
このうち、発達障害の子供が取得を検討するのは「療育手帳」と「精神障害保健福祉手帳」です。
2つの手帳は、どんな手帳なのでしょうか?
療育手帳とは
療育手帳とは、主に知的障害と知的障害を伴う発達障害の子供が取得できる障害者手帳です。
知能指数IQが70ないし75以下が対象ですが、日常生活の状態も加味されるので、IQだけでは判断されません。
療育手帳を取得することで、行政的な支援サービスを受けることが可能です。
療育手帳は法律で定められた制度ではなく、各都道府県によって内容が異なります。
例えば東京都の場合「愛の手帳」と呼ばれ、障害の重さによって等級が分かれていています。
愛の手帳の区分は、最重度が「1度」・重度が「2度」・中度が「3度」・軽度が「4度」です。
他にも、埼玉県は「みどりの手帳」、青森県・名古屋市は「愛護手帳」という名称がついていて、等級基準が異なります。
精神障害保健福祉手帳とは
精神障害保健福祉手帳は、知的障害はないけれど、日常生活や社会生活が困難な人が取得できる手帳です。
うつ病やてんかんなどの精神的疾患の他に、自閉症・学習障害・注意欠陥・多動などの発達障害の子供も対象です。
療育手帳同様、行政的な支援サービスが受けられます。
知的障害と精神的疾患両方ある場合、療育手帳と合わせて手帳を受けることも可能。
「精神保健福祉法」という法律で定められていて、1級〜3級の等級があります。
発達障害で障害者手帳を取得する方法
発達障害の子供が取得できる「療育手帳」と「精神障害保健福祉手帳」ですが、どうやって取得するのでしょうか。
それぞれ取得する方法を解説します。
療育手帳を取得する基準や方法は?
前章で説明した通り、療育手帳は知的障害により、日常生活が困難な子供が取得できる手帳です。
知的障害は、「おおむね18歳未満に生じる」と定義されていて、子供のころにわかることがほとんどです。
療育手帳も多くは子供のうちに取得しますが、大人になるまで知的障害が見過ごされてきたケースもあり、大人でも取得できます。
療育手帳の交付は自治体によって異なりますが、判断の目安は下記です。
代表的な申請方法を紹介します。
相談所での診断では、知能検査をしたり保護者に子供の様子を詳しくヒアリングしたりして、どのような支援が必要か判断します。
療育手帳の交付には約2ヵ月かかります。
精神障害保健福祉手帳を取得する基準や方法は?
精神障害保健福祉手帳は、精神疾患により、生活が困難・制限がある人が対象です。
精神障害保健福祉手帳の対象になるのは下記です。
ポイント
大人はもちろん、発達障害の子供が取得できる手帳です。
精神障害保健福祉手帳の申請には、精神疾患の初診から6ヵ月以上経過していることが条件の一つ。
理由は、一定期間同じ症状が出ていることを、医師が確認する必要があるためです。
申請には、まず住んでいる自治体の窓口に行きます。
- 自治体の窓口で説明を受け、申請書類をもらう
- 主治医に診断書を書いてもらう
- 診断書・本人の写真・その他必要書類を、自治体の窓口に提出する
交付されるまで約2ヵ月かかります。
発達障害の子供が手帳を申請するメリット
発達障害の子供が手帳を取得することで、たくさんのメリットが受けられます。
税金の減免を始めとした、様々な支援やサポートが受けられるので、活用することで生活しやすくなるでしょう。
障害の重さ・等級によって受けられる支援の違いがあるので、手帳を交付されたときに窓口でしっかり確認することが必要です。
一方、必要な支援が受けられる手帳ですが、少なからずデメリットを感じる人もいるので、
合わせて説明していきます。
税金が減免される
「療育手帳」と「精神傷害保険福祉手帳」は、どちらも「障害者手帳」なので、税金が減免されます。
障害者手帳を持っているのが子供の場合、扶養している親の税金が減免される形です。
働いている本人が障害者手帳を持っている場合、本人の税金が減免されます。
医療費が助成される
障害者手帳を持っていると医療費が助成されます。
子供の場合「こども医療費助成制度」があるので、障害者手帳での医療費助成を使うことは少ないかもしれません。
こども医療費助成は、都道府県・市区町村で制度に違いがあり、使用できる年齢も「15歳になった年度末」「18歳になった年度末」までなど様々です。
障害者手帳での医療費助成を使うのは、こども医療費の対象外になってからが多いでしょう。
こども医療費も障害者手帳の医療費助成も、自治体によって制度が異なるので、しっかり確認するのがおすすめです。
公共機関などの割引サービスが受けられる
行政の支援だけでなく、他にも割引サービスなどが受けられるので、一例を紹介します。
ポイント
その他の支援としてあげられるNHKや水道代の割引は、契約者が障害者手帳を取得していることが条件です。
「障害者手帳を持っている子供を養育している親」は対象になりません。
教育面での支援が受けられる
障害者手帳を持っていることで、教育面での支援が手厚くなります。
「保育園の入園で優先順位が高くなる」「特別支援学校の入学には障害者手帳が必要な場合がある」などです。
しかし障害者手帳を持っているからと言って、必ず保育園に入所できる・特別支援学校に入学できるわけではないので、注意が必要です。
就職するときに障害者雇用枠での就労が選択できる
障害者手帳を取得していると、将来就職するときに、障害者雇用枠で就職する選択ができます。
場合によっては一般枠での就職も可能です。
発達障害で一般枠での仕事をするのが難しい場合でも、就職支援の制度があるのは、とても助かりますよね。
障害者雇用枠で就職したことで、社会的に独立している発達障害の人が大勢いいます。
発達障害で障害者手帳を取得したときのデメリットは?
発達障害で「療育手帳」「精神障害保健福祉手帳」を取得すると、たくさんの支援サービスが受けらるので、デメリットはありません。
一方、手帳を持つことで「障害者」と認定されることに抵抗感を持つ人は、精神的に大きなストレスを感じやすくなります。
子供が手帳を持つことを、なかなか受け入れられない保護者も少なくありません。
手帳が交付され、想像以上にショックだったと吐露する保護者もいます。
そんなときは、視点を変えてみてください。
療育手帳や精神障害保健福祉手帳は、発達障害の子供にとって必要なものです。
周りからの偏見が心配かもしれませんが、必要なければ周囲に手帳のことを話す必要はないのです。
手帳を持つことで子供のサポートがしやすくなり、将来の選択肢を増やしてあげられますよ。
まとめ
発達障害で取得できる障害者手帳は、「療育手帳」と「精神障害保健福祉手帳」の2つです。
知的障害がある場合は療育手帳、自閉症・多動などの発達障害がある場合は精神障害保健福祉手帳で、両方取得している人もいます。
手帳の取得には自治体への申請が必要ですが、たくさんの支援やサポートが受けられるようなります。
発達障害の子供にとってメリットがたくさんあり、生活の困難を改善する手助けになりますよ。