「子供が授業についていけない」、「なぜなのかわからないけれど、学習面で他の子とは明らかに違う困りごとがある」そんな違和感を感じたあなたは、学習障害という言葉に辿り着いたのではないでしょうか。
障害という文字のインパクトは大きく、なかなか受け入れられなかったりショックを感じてしまうかもしれません。
どうしてそんなことになってしまったのか、原因をつきとめ、なんとかしなくてはと焦ってしまうかもしれません。
この記事では、学習障害とはそもそも何なのか、原因はあるのか、そして、どうやって学ばせていったらいいのかのアイディアまでを解説し、学習障害についての不安を解消していきます。
学習障害は発達障害の一種
学習障害は、発達障害の中の一つです。
でも、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)に比べると、まだまだ知られていない障害かもしれません。
まずは学習障害がどういう障害なのかについて、説明します。
学習障害の定義とは
文部科学省によると、学習障害は、「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである(引用:文部科学省 特別支援教育について)」と定義されています。
具体的には、例えば次のような特徴があります。
- 文章を読むのがたどたどしく、時間がかかる
- 読み間違えたり、文末を適当に変えてしまったりして正確に読めない
- 文章を読んでも意味が理解できない
- 文字や文章を書くのが苦手で、書くのが遅かったり、文章のルールがわからなかったりする
- 計算が苦手
- 算数の文章題がわからない
このように、読む、書く、計算するなど学習面において分かりやすく出てくる困りごとであるため、乳幼児期というよりは、小学校に入ってから目立ってくることが多いです。
知的障害と同時に発生しない
学習障害は、他の発達障害の自閉症やADHDと併発することはありますが、知的障害と同時に起こることはありません。
なぜなら学習障害は定義にもあるように、「知的発達に遅れはない」にもかかわらず、著しい困りごとを抱える障害だからです。
知的障害と学習障害の絶対的な違いは、発達の遅れや習得が困難なことが、全体的になのか限定的になのかです。
聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力が全体的に遅れているのなら、知的障害である可能性が高いです。
学習障害を診断する時は、まずは知能指数が知的障害の範囲に当たらないことが確認されてからの診断になります。
学習障害の原因とは
学習障害は、何が原因で起こるのでしょうか?
ここでは学習障害の原因について、解説します。
原因ははっきりわかっていない
学習障害の原因は現時点でははっきりとはわかっていませんが、おそらく脳機能の障害だといわれています。
ここでいう脳機能とは、学習障害の場合は脳や脊髄などの中枢神経だと考えられています。
学習障害の原因についてはまだはっきりとした根拠はなく、研究が進められている段階ですが、何か他の障害や、育った環境が直接の要因になっているとは考えられていません。
子供が学習障害なのは親のせいではない
かつて学習障害は、親の育て方や教育が原因だと言われたこともありました。
でもそれは違います。
見た目ではっきりとわかる身体障害や明らかに周りと違うとわかる知的障害と違って、学生障害は障害とは捉えられず、本人の勉強嫌いや怠け、親の育て方や教育が悪いと勘違いされてしまいがちです。
そのため、本人や親御さんが、周囲の反応という二次的な困りごとまでも抱えてしまうことはよくあります。
ですが、学習障害に限らず発達障害は全てそうですが、親の育て方やしつけ、教育が原因ではないので、誤った解釈で親を責めたりすることがあってはなりません。
親自身も、自分のせいなのではと責任を感じることなく、発達の特性と捉えて子供と向き合ってみてください。
学習障害の種類と、学びやすくするためのアイディア
発達障害にこれといった治療法がないように、学習障害にも治療法はありません。
ですが、早期に気づいて正しく対応してあげることで、ちゃんと学んでいくことはできます。
「勉強ができない」「努力が足りない」と決めつけて叱らず、障害だから本人のせいではないのだと周りが理解してあげることが、大事です。
そして、学習障害の子が学校で学びやすいように、環境や指導法を工夫してあげる必要があります。
ここでは、どうやって学習障害の子を支援したらいいか、学習障害の3つの種類ごとの学び方のアイディアをいくつかお伝えします。
読むことが難しい、ディスレクシア
別名「読字障害」ともいい、読むことに困難が生まれる学習障害です。
読むことが難しいと書くことも難しいので、読み書き障害ともいわれます。
文章を飛ばし読みしてしまう子には、定規や厚紙、下敷きなどで読み終わったところを隠し、読むべき所がわかるように横に置きながら読むと、読みやすくなります。
一文字ずつたどたどしく読んでしまう子には、文節や単語などの言葉のまとまりごとに斜線で区切ってあげると、区切るところがわかって読みやすくなります。
書くことが難しい、ディスグラフィア
別名「書字表出障害」ともいい、書くことに困難が生まれる学習障害です。
補助線が入ったマス目の大きいノートを使うことで、文字を上下や左右のパーツで捉えやすくなり、書きやすくなる場合があります。
数の捉え方や計算が難しい、ディスカリキュリア
別名「算数障害」ともいい、数の概念や処理、計算、推論する力などを身に着けることに難しさがあり、算数、数学の能力に困難が生まれる学習障害です。
いきなり計算問題をさせようとはせず、まずは日常生活の中で数を使う場面において、数字を理解することから始めます。
そろばんやパズル、タブレットなどを使って視覚的に数の増減がわかるように工夫することもできます。
学習障害は周りの支援が重要!親だけで抱えこまないで
学習障害は、その特性をきちんと理解して、学校などでもその子にあった学び方ができるように工夫してもらったり、適切な支援を受けることで、困りごとを減らしていくことができます。
逆に、単なる怠けや努力不足だと思われて放置されると、本人の自己肯定感も下がってしまって良くありません。
親自身も知識が無いと、「ただ勉強ができない子」なのだと判断してしまい、間違った方向に進んでしまいがちです。
子供に何らかの違和感を感じたら、抱え込まずに相談し、適切な支援を受けるようにしましょう。
学習障害には親の会があります。
同じような特性を持つ子を育てる他の親御さんの話を聞くことが子育ての参考にもなりますし、サポートの仕方などについても、相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
学習障害は、知的発達の遅れは無いにもかかわらず、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論するなどの能力のいずれかまたはいくつかに、著しい困難がある障害です。
学習障害の原因ははっきりわかっていませんが、おそらく脳機能の障害だといわれています。
かつては親のせいだと思われていたこともありましたが、学習障害は親の育て方や教育によって起こる障害ではありません。
学習障害に治療法はありませんが、その特徴によってディスレクシア、ディスグラフィア、ディスカリキュリアと細分化され、それぞれの特徴に応じた、本人が学びやすくするための工夫をするなどの支援が求められます。
単なる怠けや努力不足だと勘違いされやすい学習障害ですが、子供に何らかの違和感を感じたら、親は自分で抱え込まず、周囲や親の会などに相談し、適切な支援を受けさせることが必要です。