文部科学省の調査によると、小中学生のうち4.5%に学習障害の傾向があるといわれています。
クラスに2人程が学習障害と考えると、意外と多く感じるのではないでしょうか?
しかし、あまり周囲から理解を得られず、苦しい思いを抱える子どもはたくさんいるのです。
そこで、こちらの記事では学習障害の概念や、相談方法、学習障害のあるお子さんへの接しかたになどついて解説していきます。
少しでも学習障害の子ども達が生きやすくなるように、理解を深めるお手伝いになればうれしいです。
読み書きや算数が苦手?学習障害の症状や原因って?
学習障害とは、発達障害の一種で知的な遅れはないものの、以下6つのいずれかで極端に苦手な分野があることです。
ポイント
- 聞く
- 話す
- 読む
- 書く
- 計算する
- 推論する
症状はどれか一つだけのこともあれば、いくつか組み合わせて発症していることもあります。
また、ADHDや自閉症などほかの発達障害も併発しているケースも少なくありません。
原因は今のところはっきりと解明されていませんが、有力な説は脳の伝達になんらかの問題があり、脳の機能が偏っているというものです。
障害という名前はついていますが、学習障害はあくまで脳機能の特徴です。
本人の努力不足や親の教育不足が原因ではないことが医学的に解明されています。
学習障害?と感じたらチェックの方法はあるの?
学習障害の疑いがあるときに、どんなことが困難で、どんな風に困っているのかを整理しておくことは大事です。
以下に、参考程度に学習障害の特徴をまとめました。
聞く
ポイント
- 言葉の復唱が苦手
- 会話が理解できない
- 長い話に集中できない
- 単語の聞き間違いが多い
- 話の内容を記憶できない
- 文章の聞き取りができない
- 話を聞きながら、書きとるのが苦手
話す
ポイント
- 回りくどい話し方をする
- 筋道を立てて話すのが苦手
- 年上年下など、相手によって話し分けられない
- 単語を羅列するなどまとまった文章で話すのが苦手
読む
ポイント
- 字を読むのを嫌がる
- 文章の音読に時間がかかる
- 文字や単語を抜かしてよむ
- 文字を一つひとつ拾って読む
- 読みかたが複数ある漢字を間違えやすい
- 音読はできても、意味を理解していない
- 単語または文節を途中で区切ってしまうことが多い
- 「わ」と「ね」など形が似ている文字を読み間違えやすい
- 「っ」「ッ」、「きゃ」「しゅ」など特殊音節を読み間違える
- 「わ」と「は」、「お」と「を」のように耳で聞くと同じ音の使い分けが苦手
書く
ポイント
- 句読点を書かない
- 書き順を気にしない
- 短い文章しか書けない
- 字を書くことを嫌がる
- 字を書くのに時間がかかる
- 文法が間違った文章を書く
- マス目や行に納められない
- 「っ」「ッ」、「きゃ」「しゅ」など特殊音節を書き間違える
- 「わ」と「は」、「お」と「を」のように耳で聞くと同じ音の使い分けが苦手
計算
ポイント
- 暗算が苦手
- 数字の位が理解できない
- 計算するのにとても時間がかかる
- 計算式を暗記していても、使えない
- 繰り上がり、繰り下がりがわからない
推論
ポイント
- 暗算が苦手
- 数字の位が理解できない
- 計算するのにとても時間がかかる
- 計算式を暗記していても、使えない
- 繰り上がり、繰り下がりがわからない
学習障害はどこに相談する?診断の流れは?
お子さんが学習障害かもしれないと感じたら、まずは、地域の公的機関に相談しましょう。そこで医師の診断が必要となった場合に医療機関を受診すると流れがスムーズです。
どのような公的機関に相談するのか、そして受診する場合はどんな流れなのかをみていきましょう。
学習障害はここに相談してみよう
お子さんが学習障害かもしれないと感じたときには、まずは「子育て支援センター」や「教育センター」「児童相談所」に相談しましょう。
また、学校の先生への相談も必要です。
学習障害の子どもの支援は、学校からのアプローチも不可欠です。
多くの場合、学校内には支援が必要な子どもと先生のために校内委員会があり、専門家チームに判断を求めるかを検討してくれます。
診断はいつ受けるの?
まずは、病院を受診する方が先なのではないかと考える親御さんもいるかもしれません。
しかし学習障害は、医学的な病気ではなく脳の特性なので、教育の範ちゅうと考えられています。
ですから、先に学校や公的機関に相談するほうがスムーズです。
ただし、学習障害はADHDや自閉症を併発している場合が少なくありません。
他の発達障害が学習へ支障をきたしていないかは、医学的な判断が必要です。
そのため、お子さんの状態によっては医師の診断をすすめられることもあります。
もちろん希望をすれば医療機関を紹介して貰えます。
診断の流れは?
医師の診断は、問診票でこれまでの発達の様子や、困りごとについての確認があるので、あらかじめまとめておくとスムーズです。
脳に異常がないか、知的な障害はないか、視力や聴力に問題がないかの検査をします。
そして、知能検査や認知能力検査などの心理検査をおこないます。
これらを総合的に判断して、結果が出されるのです。
学習障害に治療方法はあるの?いつから始めるべき?
学習障害が根本的に治る薬や手術はいまのところありませんが、療育や学習支援で症状を軽減したり、悪化を防いだりできます。
お子さんが学習障害だとわかったら、すぐに療育や学習支援を始めましょう。
学習障害は小学生になり、国語や算数の授業が始まると、発覚するケースがほとんどです。そして、多くの場合なかなか周りから理解されず、本人の努力不足だと思ってしまいます。すると、思春期に入り劣等感からうつ傾向や引きこもりになるという、新たな問題を抱える要因になります。
二次的な問題が出る前に、早めに対処するほうが本人もラクです。
学習障害があっても適切なサポートがあれば伸びる!
学習障害は、苦手なことと、得意なことの凹凸が大きいという特徴があります。
得意なことはどんどん伸ばし、苦手な部分はその子なり伸びていればOKと考えましょう。
それでは具体的な伸ばし方をみていきましょう。
得意なことを伸ばす
お子さんが得意なことやすすんでやりたがることは、とことんやらせてあげましょう。
そして「色彩が豊かな絵だね」「前に聞いた時よりも、歌が上手になっているね」など具体的にどんどんほめてあげてください。
得意なことをほめれば自己肯定感につながり、やる気への原動力となります。
苦手なことはカバーする
苦手なことは、その子の特性ですから無理に克服させるのは禁物です。
子ども自身ができないことを1番悔しく感じているのですから、叱ったり、他人と比較したりするのはよくありません。
たとえば、下にあげたような代替え手段を教えてあげたり、お子さんと一緒に考えてみましょう。
- 計算が苦手ならば電卓を使う
- 読むのが苦手ならば紙を拡大印刷したり、音声読み上げ機能を利用したりする
- 書くのが苦手なら、音声認識アプリでメモをとる
- 周囲の雑音が気になって集中できない場合はノイズキャンセリング機能イヤホンを使う
道具やツールをうまく利用して、困難に感じることをサポートしてあげます。
将来、苦手な領域はカバーする手段を自分で見つけられるようになればよいのです。
学習は家庭以外の第三者を頼る
学校以外の学習は第三者を頼るのも手です。
親が付きっ切りで教えると、必要以上にイライラして怒ってしまったり、甘やかしてしまったりするためです。
今は個別指導体制をとっている塾や、学習障害をはじめとした発達障害に対応した塾、家庭教師など選択肢もたくさんあります。
ご家庭では、日常生活のマナーやルールなどを大切にしてコミュニケーション力を伸ばしてあげましょう。
まとめ
学習障害は障害という名前はついていますが、脳の発達の特性です。
知的な遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」の1つ以上で努力をしても習得が困難な状態をさします。
原因として有力な説は脳の伝達になんらかの問題があるというものです。
お子さんに学習障害の疑いがある場合は、なるべく早めに「子育て支援センター」をはじめとする、公的機関や学校に相談してください。
また、学習障害があっても、苦手分野はツールや道具を使えば負担を軽くできます。
苦手分野は無理をせず、お子さんなりの成長が見えればよしとして、得意分野を伸ばしてあげましょう。