「うちの子、野菜嫌いで全然食べなくて…」なんて声、子供の食事に関する悩みの中でも耳にする機会が多いですよね。
子供が野菜嫌いになりやすいのは、親の育て方や毎日の食事のせいではありません。
実は、人間の成長と本能の仕組みが大いに関係しているのです。
この記事では、子供が野菜嫌いになりやすい理由から、美味しく食べて欲しい!という方向けのおすすめ調理方法やレシピなどを紹介していきます。
「子供は野菜が嫌い」は本当?子供達の声から分析する
「どんな野菜も絶対に食べない!」という子もいると思いますが、多くのお子さんは
- 緑の野菜は苦手だけど、トマトは大好き
- カボチャやサツマイモなど、甘みの強い根菜類はよく食べる
- 生野菜は食べられないけど、加熱すれば食べられる
など、調理法や素材によっては野菜を食べることもできる、という場合の方が多いのではないでしょうか。
野菜の苗や種子の販売を行っているタキイ種苗株式会社が行った、「2019年度野菜と家庭菜園に関する調査」によると、0~12歳の子供のうち
- 野菜が大好き…15%、
- どちらかといえば好き…49.8%
と、およそ6割近い子供が野菜は好きと答えています。
更に、「嫌いな野菜は無い」と答えた子供はなんと15.9%と、「野菜が大好き」な子供達をわずかですが上回っているという結果も出ています。
こう見ると、野菜が嫌いというよりも「食べられない野菜もあるけれど、好きな野菜もある」というお子さんの方が多いようです。
なぜ野菜は子供に嫌われやすいの?理由は人間の本能にあった
実は、他の食べ物に比べて野菜は子供に嫌われやすい、苦手意識を持たれやすい食材です。
その理由は
・色、見た目
・香り
・食感
・味
・環境
に分けられます。
一つ一つ、具体的に見ていきましょう。
①色や見た目
子供にとって、色や見た目は「食べられる?」を判断するのにとても大切な要素です。
「アスパラはトゲトゲしてて痛そう!」「ほうれん草は色が濃くて怖い…」など、大人では想像もつかない理由で子供は野菜を嫌がります。
このように、新しい物に恐怖心を抱く現象は新奇恐怖(ネオフォビア)と呼ばれています。
子供なら誰もが持っている本能的な反応です。
②香り
ネギや紫蘇、にんにくなど、大人にとっては食欲をそそる香りでも子供にとっては強すぎる刺激臭になっている場合もあります。
大人だって、嗅いだことの無い強い匂いの食べ物を口に入れるのは怖いですよね。
子供にとって、口に入れる前から刺激を感じる野菜は特に苦手に感じやすいようです。
③食感
野菜は意外と硬いもの。
特に食物繊維が豊富な野菜は、筋っぽく口当たりが悪かったり、硬くてなかなか飲み込めなかったりします。
子供はまだ顎や歯が未熟なので、硬くて食べづらいものは食べにくく感じてしまい苦手意識を持ってしまいがちです。
他にも、
- グニュグニュして飲み込みづらい(ナス、パプリカなど)
- 噛むと種が飛び出してくるのが嫌(トマト)
- 水っぽくて好きじゃない(キュウリなどの生野菜)
など、子供によって「食べづらい野菜」は変わります。
④味
苦み、辛みが強い野菜は特に子供は苦手です。
というのも、人間は本能的に
- エネルギー源となる甘味(糖質)
- 体の元となるタンパク質(肉や魚)
- 生理作用を整えるミネラル(塩や砂糖)
を好むようにできています。
逆に、酸味や苦味は腐敗、有害を知らせる味として、本能的に避ける傾向にあるのです。
子供が苦い野菜、刺激のある野菜を嫌うのはある種当然の反応と言えるでしょう。
⑤環境
「野菜を残してはダメ!」と叱られたせいで、野菜を食べることそのものが嫌になってしまう、ということも少なくありません。
他にも、
- 上の子や友達が野菜を嫌がっているのを見て嫌なものだと覚えてしまう
- 絵本やアニメなどのシーンで「野菜は美味しくない」と刷り込まれている
など、野菜に対してネガティブなイメージを持ちやすい環境にあると、野菜を食べず嫌いになってしまう可能性が高いです。
野菜嫌いの子供は不健康?野菜を食べなくても大丈夫?
野菜を食べないと健康に悪い、子供の成長によくないのでは?と思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、身体を大きくするに必要な栄養素は野菜にはあまり含まれていません。
子供の身体を成長させるのに必要な栄養素には、どのようなものがあるのでしょうか。
身体を大きくするのは糖質とタンパク質
子供の体が成長するのに必要な栄養素は、主に糖質とタンパク質です。
糖質は身体を動かすエネルギーの源に、タンパク質は骨や筋肉を発達させ身体を大きくする役割があります。
糖質は
- 米
- 小麦製品(パン、パスタなど)
- 一部の果物や野菜(バナナ、根菜類など)
に含まれており、タンパク質は
- 肉
- 魚
- 大豆製品(豆腐、豆乳、納豆など)
に含まれています。
野菜に含まれるビタミンやミネラルは、糖質やたんぱく質の代謝を補助するという大切な役割はあるものの、あくまで補助。
食べた方が良いのは間違いありませんが、野菜さえ食べれば健康に良い!というわけではないのです。
ビタミンやミネラルは野菜以外でも摂取できる
野菜から摂取できる栄養素には、以下のようなものがあります。
- 皮膚を強くする、免疫力を強化するビタミンC
- 体内の塩分濃度を調整するカリウム
- 体内でビタミンAに代わるベータカロテン
- カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル類
などです。
これらのビタミンやミネラルは体内の他の栄養素が上手く代謝、消費できるように働く潤滑油のような役割をしています。
ですが、これらの栄養素はどうしても野菜を食べなければ摂取できない!というわけではありません。
例えば、
・ビタミンC…緑茶や果物
・ビタミンA…ウナギ、卵、バター
・カリウム…バナナ、海藻類、肉類
・カルシウム…ヨーグルト、チーズ、しらす、牛乳
・マグネシウム…そば、わかめ
・鉄…納豆、レバー、赤身の刺身
などの食品からも、十分にビタミンやミネラルは摂取可能です。
野菜が苦手なお子さんでも、果物や肉、乳製品、納豆、海藻などがしっかりと食べられているのであれば、十分必要な栄養素は取れているということになります。
食物繊維も野菜以外から摂取可能
食物繊維とは、食べ物の中に含まれている「人間が消化できないもの」のことを指します。
水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維に分けることができ、腸内で老廃物をからめて便として排出する作用があります。
食物繊維が不足すると老廃物を排出しづらくなり、腸内環境が悪化して便秘や免疫力の低下などを引き起こしてしまうことから、炭水化物、脂質、たんぱく質、ミネラル、ビタミンの5大栄養素に続く、第6の栄養素とも呼ばれています。
そんな食物繊維が多く含まれている食品は
・野菜(ごぼう、里芋、セロリ、キャベツ、とうもろこしなど)
・果物(バナナ、ぶどうなど)
・キノコ
・海藻
・穀物類(おから、オートミールなど)
などです
特に不溶性食物繊維は穀物類に多く、水溶性食物繊維は野菜以外であれば果物、キノコ、海藻に多く含まれています。
食物繊維といえばゴボウ!と覚えている方も多いかもしれませんが、野菜から取らずとも他の食材から十分に食物繊維をとることは可能です。
野菜嫌いはどうやって克服する?
小さい頃は食べられなくても、成長と共に野菜に見慣れる、知識をつけることで食べられるようになることは十分にありえます。
そこで、少しでも野菜に対する苦手意識を和らげるための方法を紹介していきます。
①育ててみる
少し手間はかかりますが、野菜を育ててみるという方法です。
ペットボトルやプラスチックトレーに水を張るだけの簡単水耕栽培なら、家の中のちょっとしたスペースで簡単に野菜を育てることができます。
- ネギの根っこ
- 大根や人参の上部(葉を育てる)
- アボガドの種
など、料理の際に出る切れ端を、水の貼ったトレイやペットボトルに入れておくだけで良いのでとても簡単です。
もう少し本格的に種から育てたい場合は、100均のスポンジに水を吸わせて、その上に種をまく方法もあります。
スポンジ栽培なら
- サニーレタス
- かいわれ大根
などを育てることができます。
毎日お世話をした野菜を収穫して食べる、というのは幼稚園や保育園などでもよくある食育の1つです。
②料理を作ってみる
実際に自分で料理をしてみると、意外と食べられる、というお子さんも意外と多くいます。
自分が作った食べ物を無駄にはできない!という気持ちが、苦手な野菜を食べる後押しをしてくれるようです。
③食べるメリットを説明する
理屈がわかる年頃の子供には、野菜を食べるメリットを説明する、というのも一つの手です。
- なぜこの野菜を食べた方がいいのか?
- 野菜にはどんな栄養素があり、身体にどんな働きかけをするのか?
など、野菜を食べた方が良い理由を並べて理屈で納得してもらうのです。
食べた方が良い理由を理解できれば、自ら納得して食べてくれるかもしれません。
④プロにお任せする
世の中には、野菜を美味しいスイーツにしているパティシエや、子供が野菜を好きになるための食育活動をしている企業なども沢山あります。
美味しい野菜スイーツをお取り寄せしたり、企業のイベントに参加するなど、野菜を食べることを楽しくするイベントにすることで、野菜を口にするきっかけを作ってみるのもいいでしょう。
大人になったら野菜嫌いがなくなる人が多いのはなぜ?
子供の頃嫌いだった食べ物が、大人になるとなぜか美味しく感じる…という経験、あるのではないでしょうか。
実は、好みが変わる、食べ慣れるといった以外にも、苦手だった食べ物が平気になる生理現象があります。
それが、舌にある味を感じる部位「味蕾(みらい)」の減少です。
味蕾は多いほど味や刺激を敏感に感じますが、人は成長するにつれて味蕾の量が減っていき、味に対する感覚が鈍感になっていくと言われています。
すると、子供の頃は強く感じていた酸味や苦味をあまり感じなくなり、問題なく食べられるようになるのです。
野菜嫌いでも食べられる?!子供に秘密のお野菜レシピ
やっぱり、子供にはできるだけ野菜を食べてもらいたい!
そんな方に試して欲しい、子供に気づかれにくい野菜の調理方法を紹介していきます。
①スープに溶かす
カボチャやジャガイモなどは、細かく刻んでスープにすると溶けて食感を感じなくなります。
おすすめは、カボチャをレンジで柔らかくなるまで下茹でした後にカレーに入れる方法です。
カレーは香りと味が非常に強いので、
- 野菜の風味や匂いを感じにくい
- 食感が溶けて気にならない
といったメリットがあります。
②器具で刻む
細かく刻んで食べやすくする方法も有効ですが、手で刻むにはどうしても細さに限度があります。
そこで、専用のみじん切り器具などを利用してみてください。
手でやるよりはるかに手早く小さく刻むことができますよ。
器具によっては米粒よりも小さな大きさに刻めるので、オムライスやチャーハンなどに混ぜてもほとんど気にならず食べることができます。
ホームセンターやネットショップで1000円~3000円程度で購入可能です。
手動のもの、電動のもの、刻む以外にも水切りやドレッシングの攪拌などができる多機能なものもあるので、好みに合わせて選んでみてください。
③肉で巻く
豚肉や牛肉などの薄切り肉で野菜を巻くと意外と食べてくれる子が多いようです。
コツは、
- 野菜を煮る、ゆでるなどをして柔らかくしておく
- 味付けを濃いめにする
こと。
濃いめの味付けのお肉が最初に舌の味蕾を刺激するので、野菜の風味や香りを感じずに食べることができます。
人参やアスパラ、細切りのピーマンなど、柔らかく仕上がる野菜に特に向いています。
肉巻き野菜の甘辛タレ焼き
材料
- 薄切り肉(豚、牛肉)…数枚
- 中に巻く野菜(にんじん、インゲン、アスパラなど)
- 小麦粉…適量
- タレの元(醤油、酒、砂糖、みりんを混ぜ合わせたもの)
作り方
- 野菜を茹でる、もしくはレンジで温めて柔らかくしておく
- 薄切り肉を広げ、野菜を乗せて端から巻いていく
- 巻いた肉にまんべんなく小麦粉をまぶし、油を敷いフライパンで焼く
- 焼き目がついたら、タレの素を入れ煮詰める
- 食べやすい大きさに切って完成
④小麦粉や米粉など、混ぜて焼く
刻んだ野菜を小麦粉や米粉、お米、じゃがいもなどと混ぜて焼いた、いわゆる「お焼き」と呼ばれている料理です。
おやつ感覚でも、副菜としても食べられて便利なうえ、生地と野菜が混ざっているので子供が食べやすいという利点があります。
ほかにもおからパウダーや豆腐を混ぜてタンパク質を足したり、じゃがいもの代わりにお米を使って和風にしたりとアレンジすれば、レシピの可能性も広がります。
野菜のおやき
材料
- 混ぜる野菜(ほうれん草、にんじんなど)…20g
- じゃがいも…50g
- 粉チーズ…大さじ1/2
- 片栗粉…大さじ1/2
- 塩…少々
作り方
- じゃがいもと混ぜる野菜はそれぞれ茹でる、蒸す、もしくはレンジで柔らかくなるまで温めて下準備をしておく
- じゃがいもを潰してペースト状にし、片栗粉と野菜、粉チーズを混ぜ、塩を加えて混ぜる
- 全ての材料をなめらかになるまで混ぜたら、一口大に丸める
- 油を敷いたフライパンで両面を焼いたら完成
まとめ
子供が野菜嫌いなのは、人間の成長過程において当然のこと。
親の育てかたや食事のメニューのせいではありません。
また、成長に必要な栄養素は野菜以外からでも十分に摂取が可能です。
それでも、野菜を食べて欲しい!という場合は、
・味の濃いものと混ぜる
・最初に感じる味を野菜以外にする
・すり潰して粉物に混ぜる
など、できるだけ野菜の食感や風味を感じにくくしてあげるのがおすすめです。
小さい頃は食べられなくても、成長と共に食べられるようになる場合が多いので、無理に食べさせなくても大丈夫。
気長に成長を待ちましょう。