年間の医療費が一定額以上かかったときに、払いすぎた税金が戻ってくる医療費控除の制度。
子供の予防接種はインフルエンザのように高額な出費になることもあるので、医療費控除の対象になるのか気になりますよね。
ここでは「子供の予防接種は医療費控除の対象なのか」「子供の医療費のうち医療費控除の対象となるもの」などをお伝えします。
医療費控除の申請で戻ってくる金額の計算方法も解説するので、賢く節税してみましょう!
子供の予防接種は医療費控除の対象になるの?
残念ながら、予防接種は大人・子供に関わらず、原則的に医療費控除の対象にはなりません。
その理由は、医療費控除は「治療」でかかった医療費が対象となるためです。
予防接種は治療ではなく、病気を未然に防ぐことが目的のため、医療費控除の対象外となります。
予防接種をしに行ってかかった交通費も対象外となるので、注意しましょう。
すでに子供の予防接種費用を間違って医療費控除に含めて申請してしまった場合、税務署から間違いを指摘されることもあるかもしれません。
その場合は素直に修正さえすれば問題ありませんが、意図的に予防接種の費用を含めることはやめましょう。
子供の予防接種で医療費控除を受けられる例外的なケース
子供の予防接種費用は、原則的に医療費控除の対象とはなりません。
しかし例外的に、子供の予防接種費用が医療費控除の対象になるケースもあるのです。
税務署に電話で確認したところ、以下のような子供の場合、医師が予防接種を「治療の一環」として診断書を発行していれば、予防接種費用を例外的に医療費控除の対象とできるとのことです。
しかし医師の診断書の発行にも費用がかかるため、節税対策にはなっても、出費は増えてしまうこともあるでしょう。
「医療費控除による還付金>診断書の費用」であれば、節税のメリットがあります。
子供の医療費で医療費控除の対象になるもの・ならないもの
それでは子供の医療費で医療費控除の対象になるものには、どのようなものがあるのでしょうか。
国税庁のWebサイトを参考にして、以下に対象になるもの・ならないものをリストアップしたので、参考にしてください。
対象になるもの
医療費控除の対象となるものは、以下のとおりです。
子供の医療費のうち医療費控除対象となるものには、成長の阻害を防止する歯列矯正や視力矯正などの治療費用や、通院の付添人の通院費・交通費も含まれることが特徴です。
交通費は緊急性の高い場合や公共交通機関が利用できない場合のみ、タクシーの利用費も対象になるので注意しましょう。
交通費の申請には、領収書を保管しておく必要はありません。
通院日と交通費の記録のメモを残しておきましょう。
対象にならないもの
以下の項目は、治療や治療に必要なことであるとみなされないため、医療費控除の対象にはなりません。
大人・子供に関係なく、治療が目的でない場合や、自己都合で発生した費用は医療費控除の対象外となります。
医療費控除でいくら戻ってくる?計算方法を解説!
子供の予防接種で医療費控除を申請した場合、どのくらいの金額が戻ってくるのでしょうか。
ここでは、戻ってくる金額の計算方法を解説します。
医療費控除で戻ってくる金額を確認するためには、以下の3つのステップの順に計算します。
- 「医療費控除額」を計算
- 課税所得額から「所得税率」を調べる
- 「医療費控除額」と「所得税率」から戻ってくる金額を計算
それぞれのステップの計算方法を見ていきましょう。
ステップ1:医療費控除額を計算
医療費控除額は、源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額」が200万円以上の場合、以下の式で計算します。
医療費控除額=1年間で支払った医療費の合計金額(医療費控除の対象のみ)-保険金などで受け取った金額-10万円
以下のような条件の方の医療費控除額を計算してみましょう。
- 「給与所得控除後の金額」:300万円
- 医療費控除の対象となる医療費:12万円
- 保険金で受け取った金額:5,000円
医療費控除額=12万円-5,000円-10万円=1万5,000円
1万5,000円が医療費控除額となります。
この金額が戻ってくるわけではないので、注意しましょう。
「給与所得控除後の金額」が200万円以下の場合は、以下の式で計算します。
医療費控除額=1年間で支払った医療費の合計金額(医療費控除の対象のみ)-保険金などで受け取った金額-「給与所得控除後の金額」の5%
以下のような条件の方の場合の、医療費控除額を計算してみましょう。
医療費控除額=12万円-5,000円-(100万円×0.05%)=6万5,000円
6万5,000円が医療費控除額となります。
ここで計算した医療費控除額は、ステップ3の計算式で使用します。
ステップ2:課税所得額から所得税率を調べる
所得税率を調べるためには、まず課税所得額を計算する必要があります。
課税所得額は、源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額」から「所得控除額の合計額」を引いて計算できます。
課税所得額=給与所得控除後の金額-所得控除額の合計額
給与所得控除後の金額とは、「年間の収入」から所得に応じて決められた「給与所得控除額」を引いたものです。
所得控除額の合計額とは、社会保険料控除、配偶者控除、生命保険料控除などの合計額になります。
次に所得税率を調べるのですが、所得税率は課税所得額に応じて決まっているので、以下の表ですぐに調べられます。
以下のような条件の方の、所得税率を計算してみましょう。
課税所得額=300万円-60万円=240万円
上の表から、課税所得額240万円は「195万円超~330万以下」になるので、所得税率は10%となります。
ここで調べた所得税率を、次のステップ3の計算式で使用します。
ステップ3:戻ってくる金額を計算
ステップ3では、ステップ1とステップ2で計算した「医療費控除額」と「所得税率」を使って、戻ってくる金額(還付金)を計算します。
還付金の計算式は以下のとおりです。
還付金=医療費控除額×所得税率
以下のような条件の場合、還付金がいくらになるか計算してみましょう。
医療費控除額=12万円-5,000円-10万円=1万5,000円
課税所得額=300万円-60万円=240万円
課税所得額が240万円なので、所得税率は10%になります。
還付金=1万5,000円×10%=1,500円
つまり、1,500円が手元に戻ってくることになります。
医療費控除の申請に必要な書類は?
医療費控除は、1月~12月までの医療費の合計額を、翌年2月~3月の確定申告で申請します。
それでは確定申告までに、どのような書類を用意しておけばよいのでしょうか。
医療費控除の申請で必要な書類は、以下のとおりです。
平成29年度分の確定申告からは、医療費の領収書・レシートの添付や提示は不要となりました。
しかし税務署が、明細書に記入した医療費の確認をとることがあります。
そのため、確定申告をしてから5年間は領収書を保管しておきましょう。
まとめ
残念ながら、子供の予防接種は治療には当たらないため、原則的に医療費控除に含めることはできません。
例外的に認められるケースもありますが、基本的には対象とならないと覚えておきましょう。
その代わり、子供の医療費には医療費控除となる項目が意外にたくさんあります。
歯列矯正や遠視の治療によるメガネの費用は高額な出費になるため、医療費控除の申請をすることで節税につながります。
医療費控除を利用して、少しでも節税対策をしましょう!