「周りの人に比べて明らかに背が低い」「小さい頃は平均身長だったのに、成長期になっても全然背が伸びない」などなど。
あまりにも低身長すぎる、成長しない場合はもしかしたら何か理由があるのかもしれません。
実は、著しく身長が低すぎる場合、原因によっては医療費の助成を受けながら治療ができるんです!
この記事では、低身長について、治療を受けられるのはどんな原因なのか、治療方法についてなどを紹介しています。
ご自身、またはご家族の身長に悩む方のお力になれれば幸いです。
低身長って何?
全体の2~3%の人が低身長にあたるといわれており、原因の90%以上は遺伝といわれています。
しかし、まれに成長ホルモンが分泌されてない、骨や臓器の異常など、遺伝以外の理由で身長が伸びていない場合があるんです。
そういった場合は、成長する余地のある成長期の間に適切な治療を受けることで改善する可能性があります。
ただし、一般的に大人になると身長は伸びないとされています。
骨は先端の軟骨部分から成長していきますが、成長期が終わるとこの部分が硬く閉じてしまうため背が伸びなくなります。
そのため、できるだけ早期発見をして適切な治療を行っていくことが重要です。
実際は大変?低身長がもたらす2つの弊害
平均身長の方からすると、「低身長だとして、何か問題があるの?」と思われるかもしれませんね。
確かに、多少背が低い程度であればあまり問題にならないかもしれません。
しかし、あまりにも低身長過ぎる場合、生活を営む上での様々な不便はもちろん、子供の場合は本人の精神的成長にも非常に影響があると言われています。
弊害①正当な評価を受けづらい
実際よりも低い年齢のように扱われることで、自尊心の低下、本人の自己肯定感の低下に繋がる懸念があります。
体が小さいせいで、周りから「体の大きさ相当の能力しかない」と誤解される可能性があるからです。
弊害②社会的に暮らしづらい
例えば、電車のつり革に届かない、お店の商品に手が届かないなど、社会生活において
非常に不便なことが多くなります。
また、そのまま成人した場合身長に見合う洋服がない、洗面所やトイレ、シンクなどが使いづらいなど、生活面でも不便を強いられることになります。
低身長になぜなるの?主な原因を6つ紹介
低身長にはいくつかの原因があります。
ポイント
- 遺伝によるもの(家族性低身長症など)
- 小さく生まれたため(SGA性低身長症)
- ホルモン異常
- 染色体異常
- 骨の異常
- 臓器の異常
以下でひとつづつ説明していきます。
原因①遺伝によるもの(家族性低身長症など)
低身長の90%以上は遺伝が原因と言われています。
両親のどちらかが病気ではなく低身長の場合、そしてその子供も同じく低身長の場合は「家族性低身長症」といいます。
他にも、遺伝的に可能性は低いにもかかわらず低身長となる「特発性低身長症」「体質性低身長症」などがあります。
どちらにしても、特に健康上問題がない低身長はこのパターンが当てはまります。
原因②小さく生まれたため
胎内にいる間何らかの理由で大きく成長せず、小さく生まれたことが原因で低身長になることを、SGA(small-for-gestational-age)と呼びます。
SGAで生まれた子供のうち90%は2~3歳までに平均近くに追いつくといわれていますが、まれに小さいまま成長が追い付かない場合はSGA性低身長症が疑われます。
この原因の場合は、3歳から成長ホルモン治療が可能です。
気になる場合、まずは専門医を受診することをおすすめします。
原因③ホルモン異常
何らかの原因で、成長を促す成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌が妨げられているため低身長になっている可能性があります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症と言われており、原因にもよりますが、低身長以外にも体に様々な弊害が起きている可能性があります。
原因②のSGAとは違い、生まれた時は平均的な身長だったのに、1歳前後から成長が遅れだし、年齢を重ねるごとに周りとの差が生まれてくる傾向にあります。
この原因の場合も、ホルモン治療が可能です。
原因④染色体異常
染色体異常による低身長は、女子に2本あるX染色体のうち片方が欠けている、もしくは構造に異常があるために起こる女子特融の症状です。
「ターナー症候群」と呼ばれており、低身長症の女子の約5~10%が該当します。
生まれた時から幼少時は平均より小さめなだけの普通の子供ですが、小学校に入る頃には平均との差が開き始めます。
他にもこの症状の特徴として、二次性徴を始めとした成長期が起こらないことがあります。
もう一つの染色体異常は、「プラダー・ウィリー症候群」というものです。
こちらは一万人に一人の割合で発症する症状で、肥満や発達障害など低身長以外にも様々な弊害があります。
どちらも成長ホルモン治療が可能な症状です。
原因⑤骨の異常
骨に異常があるために身長が伸びない「軟骨異栄養症」は、突然変異(遺伝に関係なく発症する)が症状の8割をしめます。
胴に比べて手足が短い、四肢のバランスが悪い、おでこの骨が大きいなどの特徴があります。
発症は10万人に3、4人と推定されており、小児慢性特定疾病に指定されています。
成長ホルモン治療が可能ですが、医療費助成制度の対象疾病のため、治療適応基準が厳しく定められています。
原因⑥臓器の異常
内臓疾患のため、充分な栄養を体に取り込むことができず低身長となっている場合です。
この場合は、低身長の治療ではなく臓器の異常を治療することが優先となります。
臓器が回復すれば身長も伸びていきますが、慢性腎不全で、かつ標準身長を著しく下回る場合は成長ホルモン治療を行う場合があります。
低身長で受診が必要?4つのポイントで簡単チェック!
それでは、以下のサイトで実際に低身長かどうかチェックしてみましょう。
入力内容は
- 生年月日
- 性別
- 現在の身長
- 入力した年月日
の4つです。
http://www.nordicare-nn.jp/app/selfcheck/top
上記のサイトでは1994年より前に生まれた方の判定ができないので、それ以前に生まれた方はこちらのサイトがおすすめです。
http://www.dpl-jp.com/javascript1.html
どちらのサイトでも、判定後に表示される身長SDS(身長SDスコア)が重要です。
身長SDスコアが-2SD以下なら要注意!
サイトに値を入力すると、身長SDスコアという数値が出てきます。
このSDスコアというのは、「平均値からどれだけ離れているか?」というのを表しています。
スコアが-2SD以下というのは、「平均身長よりも著しく身長が低く、何かしらの原因で低身長症の可能性がある」という意味で、受診を考える一つの目安になっています。
低身長を治すために、成長ホルモン治療は受けられる?
チェックの結果治療が必要かもしれないとわかったら、「今すぐ治療をしたい!」と焦る方も多いと思います。
ですが、低身長だからといって誰もが治療を受けられるわけではありません。
まずは専門医が問診・診察を行い、様々な検査結果から成長ホルモン治療が必要な低身長症なのかを判断します。
問診、診察から結果が出るまで
診察内容は、主に以下の内容です。
- レントゲン
- 血液検査
- 成長ホルモン分泌検査
- 染色体検査
- 頭部MR検査
他にも症状や問診結果に応じて必要な検査を行います。
これらの検査結果をふまえ、成長ホルモン治療が必要と判断されれば治療に入ることができます。
低身長の治療方法、成長ホルモン投与について
低身長症の主な治療方法は、成長ホルモンの皮膚下への直接的な投与です。
というのも、成長ホルモンというのはタンパク質なので、口から投与すると全て消化されてしまい効果がありません。
そのため、医者に決められた日数の間、直接注射器を使って成長ホルモンを注射する必要があります。
自宅で注射は可能なの?
一般的に成長ホルモン治療は、自宅で本人が、もしくは家族によって本人に直接注射を行っていきます。
病院で使用されている注射器とは違い、細く短い針が使われているため、比較的痛みは少ないと言われています。
また、見た目もペン型になっており、小さな子供でも怖がらずできるよう工夫がされています。
注射をするなら夜寝る前に
成長ホルモンは、夜眠りについてから2~3時間ごとに分泌を繰り返します。
成長ホルモン注射も、そのリズムに合わせて寝る前に打つのが一般的です。
大人でも成長ホルモン投与は受けられる?
成長ホルモンは、大人になってからも分泌され続けます。
成長ホルモンは摂取した栄養の代謝に必要だからです。
そのため、成長ホルモン分泌不全と診断された場合は大人でも成長ホルモン治療を受けることは可能です。
ですが、低身長症の改善を目的とした治療は子供のうちしか受けることができません。
低身長症はいつまで治療が続く?
成長ホルモンの投与を初めてから、以下の条件のどれかを満たすまでは治療が続きます。
- 骨の端にある骨端線が閉じて、成長期が終了した
- 十分に身長が伸びたと判断された
- 成長の度合いが非常に遅くなった
他にも、年齢、身長、成長速度、骨年齢などの経過を元に医者が治療の継続、終了を判断します。
また、小児慢性特定疾患治療研究事業の医療費助成を利用している場合は、
ポイント
- 男子は156.4cm
- 女子は145.4cm
が、治療を終了する基準となります。
低身長症は医療費の助成を受けられる!
低身長症は原因によって受けられる医療費の助成が変わってきます。
詳細についてはかかりつけの医師に確認してみましょう。
①小児慢性特定疾病医療費助成制度
- 成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症
- ターナー症候群又はプラダ―・ウィリ症候群
- 軟骨異栄養症
- 腎機能低下による低身長の場合
など、脳の器質的原因ではない低身長症の場合はこの助成を受けることができます。
認定基準、継続基準、終了基準についてもそれぞれ規定が設けられていますので、以下のサイトを参考に確認してみて下さい。
https://www.shouman.jp/assist/hormone/
②指定難病療助成制度
脳の下垂体機能の低下による成長ホルモン分泌不全性低身長症は、国の指定難病です。
対象疾病、自己負担額、指定医療機関など様々な規制があるので、詳しくは以下のサイトを参考にしていただければと思います。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5927
③高額療養費制度
一カ月の間に支払った医療費が一定額を超えた場合、加入している健康保険から過払い分を戻してもらえる制度です。
詳しくは加入している健康保険の窓口にお問い合わせください。
④乳幼児医療助成制度、子ども医療助成制度
住んでいる都道府県によって金額は異なりますが、子供の医療費が自己負担額を超えた場合助成を受けられる制度です。
詳細は、お住いの地域の市役所、保健所などにお問い合わせください。
まとめ
低身長の治療は早期発見が非常に重要です。
なぜなら、成長期が終わり骨端線が閉じてしまうと、身長が伸びなくなってしまうからです。
低身長の90%は健康上の問題が無い場合が多いと言われていますが、まれに染色体やホルモン、骨の異常など、治療が必要な低身長症の場合があります。
その場合、子供であれば成長ホルモン治療を行う事で身長が平均近くまで伸びる可能性があります。
低身長症と診断された場合は、自宅で成長ホルモンを注射器で投与する治療を受けます。
治療の経過をみて、平均身長近くまで成長した場合や骨端線が閉じるなどこれ以上の成長が見込めないと判断されるまで治療は行われます。
成長ホルモン治療は、原因によって助成金を受けられるものがあるので、担当医や加入している健康保険の窓口、お住いの地域の市役所などにお問いあわせ下さい。