もし、子供がターナー症候群かもしれないと思ったら、親なら誰しも不安でいっぱいになってしまうと思います。
では、ターナー症候群とは、どういうものなのでしょうか。
ターナー症候群は、染色体異常によって引き起こされる特徴的な体質のことです。
男性には現れず、女性のみに起こりえます。
いくつかの代表的な特徴がありますが、例えば極端に身長が低い女の子だと、ターナー症候群を疑われることがあります。
この記事では、全く知識がない0の状態からでもターナー症候群がどういうものなのかよくわかるように、丁寧に解説していきます。
ターナー症候群ってどんな特徴があるの?
ターナー症候群とは、アメリカの学者、ターナーによって一つの症候群として捉えられ、広まったものです。
症候群という言葉は、原因を同じくして発生する症状や特徴などを総称したもののことで、病気とは少し違います。
ただし、その症状の多くがホルモンの異常からくるものなので、内分泌の病気として紹介されています。
まずはターナー症候群の特徴について、説明します。
身長が低い
ターナー症候群の女の子は、身長が低いです。
生まれた時の身長は47cmほどで、一般的な女の子に比べると2cmほど低いです。
2cmというと小さな差のように思えますが、ターナー症候群の女の子はその後の身長の伸びも小さいことが多く、何も治療をしなかった場合、大人になっても身長が138cm前後にしかならないといわれています。
平成29年 国民健康・栄養調査によると、日本人女性の20台の平均身長はだいたい158cm前後ですので、ターナー症候群の女性とはおよそ20cmの差があることがわかります。
同じデータからみると、138cmの身長は、10歳の女の子の平均身長です。
生まれた時の差は小さくても、大人になると明らかな差となることがわかります。
外見に特徴的な傾向がある
ターナー症候群には、低身長の他にも外見でわかる特徴があります。
- 首から肩にかけての皮膚にたるみがある
- 肘から先の腕が外に離れている
- 背中側の髪の毛の生え際が低い
- 手足の甲がむくんでいる
これらの特徴が多く見られます。
思春期の二次性徴が起きないことが多い
女の子は10歳から12歳くらいになると、胸が大きくなったり月経が始まったりという二次性徴が現れてきます。
これは卵巣から血液中に分泌される女性ホルモンによって引き起こされる変化です。
ですが、ターナー症候群の女の子は卵巣の機能が弱いことが多いので、月経がこなかったり、二次性徴そのものがおこらなかったりします。
ターナー症候群の人に知的の遅れはあるの?
子供がターナー症候群ではないか?と思った時に、知的の遅れがあるのかどうかはとても気になることだと思います。
ですが、一般的にターナー症候群は、知的の遅れは伴いません。
算数や体育が苦手など不得意なことはありますが、時間をかければわかるようになります。
ただし、一部のターナー症候群の女性は知的障害があることもありますので、100%ないとは言い切れません。
ターナー症候群がおこる原因は?
ターナー症候群は、染色体の異常によって起こる体質です。
ですから後天的に起こるものではなく、生まれつきのものです。
多くの人は、46本の染色体を持っており、そのうち2本は性染色体といわれるものです。
性染色体は性別の決定に関わる染色体で、人の場合、男性はx染色体とy染色体を1本ずつ、女性はx染色体を2本持っています。
ターナー症候群は、女性が2本のx染色体のうち1本がない状態、もしくは一部が欠失した状態で生まれてくることで起こります。
つまり、もともとx染色体が1本しかない男性には起こりえない、女性だけに起こりえる体質です。
ターナー症候群かどうかを調べる方法
ターナー症候群は、染色体検査ではっきりと診断できます。
染色体検査は血液を採取して調べるものなので、調べられる方にとったら、ただ採血されるだけでさほど身体的負担はありません。
検査の結果、x染色体のうち1本の全体または一部が欠失していることがわかれば、ターナー症候群だと確定します。
生まれてすぐにでも検査すればわかりますが、成長していくにつれ、身長が低い、思春期が遅い、不妊などの違和感からターナー症候群の疑いを持たれ、初めて検査してわかるという場合もあります。
ターナー症候群の女の子と妊娠・出産
日本内分泌学会のホームページによると、ターナー症候群の99%以上の方が不妊だといわれています。
残念ながら、通常の不妊治療で妊娠に至ることは、ほとんどありません。
ただし、ターナー症候群の女性であっても、卵子提供により出産しているケースはあります。
普通の女性のように自然と子供を授かることは難
しくても、100%子供を持てないとは言い切れません。
とはいえ、やはり妊娠や出産が難しいことに変わりはなく、課題は山積みです。
ターナー症候群の女性は卵子提供で妊娠してもリスクが大きい
ターナー症候群の女性は多くの場合、低身長で無月経です。
ホルモン治療なども受けずに成長した場合、大人になって卵子提供を受けて妊娠までこぎつけたとしても、子宮が妊娠に耐えられずに母体へのリスクがとても大きくなってしまいます。
妊娠中にも様々な異常が発生しやすいですし、無事に出産して元気な子を授かるまでには、多くの専門家の協力が必要です。
妊娠・出産の可能性を残すには幼少期からの準備が必要
ターナー症候群の女性が妊娠するためには、様々な条件がそろって、母子ともに安全に妊娠と出産ができるという判断がなされなければなりません。
実際にターナー症候群で卵子提供による妊娠・出産を成功させた人は、幼少期から小児科の医師に診てもらいながらホルモン療法を続けてきたために、子宮は正常な人に近い状態を維持していたそうです。
それ以外にも、合併症もなく、体格もいいということも大事な条件です。
ただし、ターナー症候群と一言で言っても、症状は人によって様々です。
人によってはどんなに幼少期から準備し、努力を続けてきても、妊娠は難しい人もいます。
それでも1%でも可能性があるのなら、後悔しないように、幼少期から信頼できる小児科医に相談しながら育てていくことが大切です。
ターナー症候群の子のためにできること
ターナー症候群は染色体異常によるものです。
染色体を変えることはできないので、根本的な治療法はありません。
ですが、それぞれの症状に対する対処療法的な治療はありますので、長期的に医療機関による適切な管理を受けていくことが求められます。
ホルモン治療で身長を伸ばす
低すぎる身長に対しては、成長ホルモンの注射をします。
現在では、ホルモン治療を受けた成人のターナー症候群の女性の身長は、約145cm以上です。
ホルモン治療をしなかった場合は138cm前後であることを考えると、治療をすることで、普通の女性の平均身長158cmにぐんと近づく可能性があり、希望が持てます。
二次性徴を促す治療を行う
二次性徴に関しては、女性ホルモンの投与を行います。
10歳から14歳あたりで始め、段階的に女性ホルモンを増やしていきます。
思春期以降になったら、2種類の薬で月に1回の定期的な月経がくるようにする治療もあります。
合併症を早期発見する
ターナー症候群は、成長に応じて次のような合併症が起こる場合がありますので、定期的に病院を受診して検査などをしていくことが求められます。
そして治療が必要であれば、症状に応じて治療をします。
合併症が必ずしも起こるとは限りませんが、起こりやすい合併症があらかじめわかっていれば、早期発見し、病気の出現や進行を食い止められることもあります。
ターナー症候群に起こりやすい合併症
ターナー症候群の約20%の人に、生まれつきの心臓や大血管の問題があります。
心臓から出ている大きな血管が途中で細くなる大動脈縮窄や、定型的ではない大動脈弁が多いといったものです。
また、腎臓の形が普通と異なる場合がありますが、心臓、血管、腎臓ともに、超音波検査で診断できます。
子供時代の合併症
ターナー症候群の女の子は、中耳炎になりやすいといわれています。
中耳炎は繰り返すと難聴になってしまうこともあるので、注意する必要があります。
大人になってからの合併症
先にも述べたように、大人になってからの合併症で代表的なものには不妊があります。
それ以外にも、肥満や糖尿病、甲状腺ホルモンの分泌低下、骨粗鬆症といった合併症がでる可能性があるので、ホルモン補充などの治療を行う場合もあります。
治療以外にも、生活習慣に気を付けて生活していくことが大切です。
周りへの理解を求め、過ごしやすい環境をつくろう
ターナー症候群は、見た目でもわかりやすい特徴があるので、子供の頃は本人もつらい思いをすることがあるかもしれません。
長期にわたり、周りへの理解を求め、本人が過ごしやすいように環境を整え、フォローしていく必要があります。
しかし、ターナー症候群の子が過ごしやすい環境を作っていくにあたっては、親御さんもたくさんの悩みを抱えてしまうと思います。
でも病院で主治医に相談できる時間は限られていますし、治療に関すること以外はなかなか相談しにくいものです。
ターナー症候群は、各地に家族会があります。
家族会に参加して同じ悩みを持つ親御さんに出会えると、悩みを相談できるだけではなく、1人じゃないという安心感を抱けます。
お近くの家族会を調べて交流を深め、先輩たちの対処法などを参考にしながら育てていくと心強いです。
まとめ
ターナー症候群は、生まれながらの染色体異常による体質で、女性にのみ起こりえます。
身長が低い、二次性徴が現れないなどの特徴がありますが、知的な遅れはないことが多いです。
ターナー症候群を治す根本的な治療はありません。
ですが、低身長に対しては成長ホルモンの注射、二次性徴に関しては女性ホルモンの投与といったように、対処療法的な治療はあります。
ターナー症候群の女性の99%が不妊と言われており、残念ながら妊娠するのはとても難しいです。
しかし、卵子提供を受けて妊娠出産をしたターナー症候群の女性もいますので、幼少期から適切な治療を受け、条件もそろえば、妊娠の可能性が全く0とは言い切れません。
不妊以外の合併症が起こる場合もありますので、長期にわたって、医療機関による適切な管理を受けていくことが望ましいです。