妊娠出産、そして子育てには何かとお金がかかりますよね。
特に妊娠中の思わぬトラブル、そして出産は分娩方法を始め、病院や入院する部屋によってもかかる費用が変わってきます。
そこで、子供を育てる家庭の負担を軽くするべく国と自治体では様々な支援制度を整えています。
この記事では妊娠出産から育児、子供の病気やケガなどで申請できる制度をシーン別にまとめているので、ライフスタイルに合わせて参考にしてみて下さい。
なお、記事内で使用している数字は2020年9月時点の内閣府、厚生労働省のホームぺージを参照しています。
妊娠・出産でもらえる補助金、助成金
妊娠・出産にかかる費用は受診する病院や妊娠中の症状によって変わります。
一般的に妊婦検診の受診回数は14~16回、基本的な検査なら1回5000円前後、子宮頸がんや血糖、感染症などの特別な検査なら1回1万円前後の出費です。
妊婦検診は保険適用外なので、これらを全て実費で支払うとなると分娩費用とは別に健診だけで15万円前後かかる計算になります。
この負担を軽減してくれるのが、母子手帳と共に発行される妊婦検診補助券です。
妊娠中に使える、健診助成制度(妊婦健診補助券)
健診助成制度とは、保険適用外の妊婦検診にかかる金額を自治体が負担してくれる制度です。
母子手帳と同時に配布されるのが一般的で、健診にいくたびに指定された補助券を使用していきます。
なお、厚生労働省の発表によると自治体の負担額は平均9万円ですが、県によって金額に差があるので、詳しい費用はお住いの地域の市役所などに問い合わせて確認してみて下さい。
また、こちらの補助券は紛失した場合、原則再発行ができません。
条件次第では再発行できる自治体もありますが、再発行されるまでの間に支払った実費の健診費は返金されないので、無くさないよう大切に保管しましょう。
子供1人につき支払われる、出産育児一時金
出産育児一時金とは、職場、もしくは配偶者が加入している健康保険から一人の子供につき一律42万円支払われる制度です。
支払い条件は
- 健康保険に加入している
- 妊娠4カ月以降出産した
の2点です。
子供1人につき支払われるので、多胎妊娠であれば出産した乳児の数×42万円が支給される計算になります。
なお、流産・死産だった場合の支給額は、妊娠週数や出産時の状況によって変わってきます。
詳しくは加入している健康保険組合に確認してみてください。
帝王切開をした場合は加入している医療保険をチェック!
普通分娩は健康保険の対象外ですが、帝王切開は多くの健康保険で保険適用されるため、自己負担額が3割になる可能性があります。
帝王切開にかかる金額は、選択帝王切開か緊急帝王切開か、さらに病院によっても金額が変わってきます。
帝王切開の場合は、手術代以外にも
- 入院日数の延長による入院費の増加
- 投薬、麻酔、追加の処置による費用
など、約50万円前後かかる計算になります。
基本的に手術、使用される投薬、検査入院費は保険対象ですが、食費や差額の個室代などは自己負担になります。
また、帝王切開における手術は治療とみなされるため、後述する高額医療費制度を使用することも可能です。
帝王切開は妊婦であれば誰もがなる可能性があるので、臨月になる前に加入している健康保険を確認しておきましょう。
育児をする上でもらえるお金
食費、日用品、教育費など、日々の育児をする上でかかる負担を軽減してくれる制度を紹介していきます。
児童手当
日本に住む0歳以上の子供が中学校を卒業するまで受け取ることができる手当です。
子供の年齢によって支給額が以下のように決まっています。
- 0歳~3歳未満・・・15,000円
- 3歳~小学校修了まで・・・10,000円(第3子以降は15,000円)
- 中学生・・・10,000円
ただし、子供とみなされるのは18歳以下と決まっています。
そのため、例えば第一子が19歳の3人兄弟の場合は、18歳以下である2人目が第一子と換算されます。
この場合は3番目の子供が第二子となり、実際の子供の人数と一致しなくなるので注意が必要です。
なお、児童手当は扶養親族の人数ごとに所得制限が設けられており、制限を超える場合、支給される児童手当は一律5,000円となります。
扶養人数ごとの所得制限は以下の様に定められています。
被扶養親族の数 | 所得額(万円) | 収入額(万円) |
0人 | 622 | 833.3 |
1人 | 660 | 875.6 |
2人 | 698 | 917.8 |
3人 | 736 | 960 |
4人 | 774 | 1002.1 |
5人 | 812 | 1042.1 |
所得制限を超えている場合、児童手当は一人当たり一律5000円となります。
児童手当は毎年6月・10月・2月に前月分までがまとめて支給されます。
児童手当は出生日から数えて15日以内にお住いの市区町村へ申請手続きをしなければなりません。
なお、手当を受け取る人が公務員の場合は、勤務先で児童手当の申請をする必要があります。
児童扶養手当
児童扶養手当とは、
- 両親が離婚している
- 父親が死別している
- 父又は母が裁判所からの保護命令を受けている
以上3つのうちどれかの条件を満たしている
- 18歳以後最初の3月31日までの間にある者
もしくは
- 20歳未満で、政令で定める程度の障害の状態にある者
の養育者に支払われる手当です。
令和2年4月現在、支給額は、
子供の人数 | 支給額 |
1人 | 全部支給:43,160円 一部支給:43,150円~10,180円(所得に応じる) |
2人 | 全部支給:10,190円 一部支給:10,180円~ 5,100円 |
3人目以降の加算額(一人当たり) | 全部支給: 6,110円 一部支給: 6,100円~ 3,060円 |
と定められています。
所得制限となる収入額・所得額は、孤児本人、養育者、配偶者、扶養義務者でそれぞれ細かく定められているので、詳しくはお住いの地域の市役所などで確認すると確実です。
なお、厚生労働省から「令和3年3月分から、児童扶養手当の額と障害年金の子の加算部分の額との差額を児童扶養手当として受給することができるように見直します。」(引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/000637438.pdf)
と発表がありました。
既に児童扶養手当の受給資格を受けている場合、追加の申請などはありませんが、見直し後新たに受給資格者となる方は、自宅のある市区町村へ申請する必要があります。
特別児童扶養手当
精神、または身体に中~重度の障害を持ち、日常的に介護が必要な20歳未満の児童を養育している家庭に支給される手当です。
支給条件は
- 身体障害者手帳
- 精神保健福祉手帳
のいずれかが配布されていることです。
支給月額は令和2年4月時点で
- 身体障害者手帳(1・2級)、療育手帳(A以上)、精神保健福祉手帳(1級)のいずれかの場合:52,500円
- 身体障害者手帳(3級)、療育手帳(Bの2以上)、精神保健福祉手帳(2級)のいずれかの場合:34,970円
と定められています。
ただし手帳の級はあくまで目安であり、対象とならない可能性もあります。
また、施設に入所しているなど、家庭で日常的介護をしていない場合も支給対象にならない可能性があります。
高等学校等就学支援金
高校をはじめとした各種学校への就学を経済的に支援するための手当です。
日本国内に住所があり、高等学校、専修学校、高等専門学校等の学校に通う生徒であることが支給条件です。
就学支援金は、世帯年収や高校課程(通信制か全日制か)によっても変わります。
また、
- 世帯年収が910万以上
- 高等学校の在籍期間が、全日制なら36カ月、通信制なら48カ月を超えている
といった場合は、受給条件を満たしてみても支援を受けることができません。
支援される金額は
- 全日制の場合:世帯年収と家族構成による
- 通信制の場合:1単位ごとの支給(金額は世帯年収による)
となっています。
子ども医療費助成制度
子供の医療費を全額補助、もしくは一部を補助してくれる制度です。
補助額と対象となる年齢、また制度の呼び方は市区町村ごとに異なります。
0歳から中学卒業までを「子ども医療費助成制度」の対象とする地域もあれば、乳幼児期(就学前)と、小学校入学後で制度が切り替わる地域もあります。
詳しくはお住いの地域の子ども医療費助成制度について確認してみて下さい。
働くママがもらえる補助金、助成金
妊娠出産で一時的に休職しなければならないママが受給できる補助金を紹介していきます。
出産手当金
妊娠時に仕事をしていた方が産休に入る際に、給料の代わりに加入している健康保険から支給されます。
在職時の給与を日割り計算した分の約3分の2の金額が、取得した産休(原則、出産予定日の6週間前から出産後8週間まで)の日数分支給されます。
ただし、健康保険の加入期間が12ヶ月未満の場合は支給金額が異なる可能性があるので、詳しい金額は加入している健康保険に問い合わせる必要があります。
育児休業給付金
子供が1歳になるまで、ママとパパは育児休業をとることができます。
しかし、育児休業中は仕事ができないため当然給料は支払われません。
そこで、会社の代わりに加入している雇用保険から月給の67%(育児休業開始から6ヵ月経過後は50%)を2カ月に1度支給してもらえる、というのが育児休業給付金という制度です。
ただし、育休終了後に復職することが条件です。
育休中に退職、転職した場合は受給を止められる可能性があります。
仕事を辞めたママ、就職を考えているママが受け取れる補助金、助成金
失業給付金
退職した場合、申請をすれば失業給付金を受け取ることができます。
失業給付金の支給開始日は、退職した理由によって変わってきます。
自己都合による退職の場合は、退職から給付まで約3カ月待つ場合もあるので、給付金額はもちろん給付が開始する日も併せて確認しておきましょう。
また、支給額は
- 年齢
- 賞与を除く、過去半年の給料
- 退職理由
- 雇用保険へ加入していた期間
等に応じて変化します。
失業給付金は、申請するだけでなく雇用保険受給者説明会に参加したり、4週間に1度、指定の日時にハローワークへ赴き求職活動の現状などを報告しなければなりません。
これらの日程は基本的にこちらから指定できず、やむを得ず時間が合わない場合は出席できない理由を証明する証明書(医師の診断書など)を提出しなければなりません。
子供が小さい場合や妊娠、出産が近い場合は通えない場合を考えて、事前に相談するなど手を打っておく必要があります。
条件に該当した場合もらえるお金
子供の医療費に関する補助金の制度についてまとめました。
高額医療費制度
高額医療費制度とは、月初~月末までの間、支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、申請すれば超えた金額が返金される制度です。
自己負担限度額は、年齢や所得区分によって変わってきます。
小学生までの子供であれば(地域によっては中学生まで)子供医療費助成制度が適応されるため使用することはあまりないと思いますが、助成制度から外れた子供が大きなケガをした場合は、高額医療費制度を利用しましょう。
また、事前に「医療費が高くかかりそう」とわかっている場合は、事前に申請することで「限度額適用認定証」の交付を受けることもできます。
認定証を病院や薬局の窓口に提示すれば、自己負担限度額以上の支払いをする必要がなくなります。
事前に医療費がかかると予想できる場合は、先に申請してしまうというのも一つの手です。
医療費控除
医療費控除とは、1年間で支払った医療費の総額が10万円を超える場合、所得税として支払う金額が超えた分に応じて一部差し引かれるされる制度のことです。
年間の所得に応じて控除額の計算方法は違います。
- 所得が200万円以上の場合:支払った医療費ー保険金などで補填された金額ー10万円
- 所得が200万円未満の場合:支払った医療費ー保険金などで補填された金額ー年間所得の5%
出産育児一時金や入院給付金など、保険金が支払われた場合は支払った医療費から差し引く必要があります。
また、控除額が全額返金されるわけではないので注意しましょう。
実際に還付される金額は
- 控除額×所得税率(所得額によって異なる)
で計算されます。
自治体ごとの給付金や支援金、助成金もある
この記事で説明している制度や助成金とは別に、自治体ごとに定められた制度も存在します。
例えば
- 第3子以降、出生につき1人3万円支給(千葉県君津市)
- 妊婦に1万円のタクシー券、出産後3万円の商品券贈呈(東京都中央区)
- 1子10万円分の商品券を贈呈(北海道芦別市)
- 第1子3万円、第2子5万円、第3子10万円、第4子20万円、第5子以降、1人につき30万円を支給(兵庫県洲本市)
など、妊娠出産にかかる経済的負担を軽減するための制度は数多くあります。
また、直接支援金を受けられる以外にも
- 出産時に紙おむつを3パック贈呈、4カ月健診でも3パック贈呈(神奈川県海老名市)
- 妊婦面談を受けた場合、多摩産の木を使ったおもちゃなどが入ったプレゼントボックスを贈呈(東京都八王子市)
といったように、絵本や紙おむつ、産後必要なおもちゃや育児アイテムを支給してくれる自治体もあります。
申請方法は自治体によって違う
一般的に申請する場合は申請書と妊娠・出産・入院などを証明する証明書を添付しますが、自治体によっては
- 申請後、面接を受ける
- 説明会や認定のための講習を受ける
などの方法をとっている場合もあります。
まとめ
妊娠出産、育児中に受けられる補助金、助成金には、申請すれば誰もが支給してもらえるものと、自治体ごとに定められたものとがあります。
これから出産される方、特に仕事をしている方は自治体と加入している雇用保険が定めている制度を事前に確認しておきましょう。
また、お住いの地域が子育て支援に力を入れている地域であれば、申請することでお金だけでなく紙おむつや絵本などが支給される場合もあります。
後から「申請時期が過ぎてた!」ということにならないよう、事前に申請方法や時期を確認しておけば、いざという時に損をせずに済みますよ。