子供が学校に行きたがらなくなると、親としてはとても心配になりますよね。
「不登校」という言葉がありますが、自分の身に降りかかってこないと、いまいちどんなものなのかわからないと思います。
この記事では、不登校とは何か、なぜ不登校になってしまうのか、子供が不登校になったらどうしたらいいのかに加え、親がまず何をしたらいいのかというアドバイスまで、不登校について総合的に解説します。
不登校ってどんな状態の事を言うの?
不登校とはどんな状態のことをいうのか、まずは不登校の定義についてご説明します。
文部科学省によると、不登校の状態にある児童や生徒とは、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義されています。(参考:文部科学省「不登校の現状に関する認識」)
平成28年12月、文部科学省は不登校の子供に対する支援について、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」で定めました。
そこでは「不登校児童生徒」の定義に加え、不登校の状態にある児童や生徒が教育の機会を失わないための支援が体系的にまとめられており、不登校への支援が広く世間に認知されるようになりました。
年々増加する不登校児
不登校の状態に陥っている児童や生徒は、年々増加の傾向にあります。
平成30年の、小学校、中学校における不登校状態の児童や生徒の数は164,528人で、前年度の144,031人から20,497人(約14%)増えています
子供の数は年々減っているのに、不登校状態の児童や生徒の数は、増えているのです。
なぜ不登校になってしまうの?不登校のきっかけや理由とは
今不登校になっているお子さんも、最初から不登校だったというわけではないと思います。
では、なぜ不登校になってしまうのでしょうか。
不登校になるきっかけや理由について、ご説明します。
不登校の直接的なきっかけとは
文部科学省の調査によると、不登校の直接的なきっかけには次のようなものがありました。
学校生活 36.2%
(例:友人関係をめぐる問題、教師との関係をめぐる問題、学業の不振、クラブ活動や部活動への不適応、学校のきまりなどをめぐる問題、入学・転入・編入・進級時の不適応)
家庭生活 19.1%
(例:家庭の生活環境の急激な変化、親子関係をめぐる問題、家庭内の不和)
本人の問題 35.0%
(例:病気による欠席、その他本人に関わる問題)
その他 4.2%
不明 5.5%
(参考:文部科学省「不登校の現状に関する認識」)
直接的なきっかけは多岐に渡りますが、やはり学校生活で何らかの問題にぶつかったことがきっかけになる場合が最も多いです。
不登校の本質的な7つの理由とは
先に、不登校のきっかけについて書きましたが、 きっかけは単にきっかけであって、不登校の本質的な理由は別にあることもあります。
文部科学省の調査によると、不登校状態が継続している理由には、次の7つのタイプがあることがわかりました。
- 1.学校生活上の影響
- 2.遊び・非行
- 3.無気力
- 4.不安など情緒的混乱
- 5.意図的な拒否
- 6.複合
- 7.その他
この中で最も多かったのは、「複合」で、次に多かったのは「不安など情緒的混乱」、3番目に多かったのは「無気力」です。
最も多かったのが「複合」という結果でもわかるように、不登校は、何か一つの決定的な理由で起こるのではなく、様々な要因が重なった結果として起こる場合が多いです。
子供が不登校になったらどう対処したらいいの?
子供が不登校になってしまったら親はどうしたらいいのでしょうか。
不登校のタイプ別の対処法をまとめました。
学校生活上の影響タイプ
いじめなどの子供同士の人間関係や、教職員との関係性の問題、学力不振や、入学、転入、進級時の不適応、部活動などでのトラブルなど、明らかな学校生活上の問題が原因で登校できなくなってしまったタイプです。
このタイプの場合、原因となっている問題が取り除かれ、混乱や動揺がなくなれば登校できるようになるケースが多いです。
学校側とよく話しあい、教職員間でよく連携をとってもらいながら問題解決に取り組むことが、重要になります。
また、本人にLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、アスペルガー障害などの発達障害があるために、対人関係や学習面での困難が生まれてしまうこともあります。
この場合は、医療機関や発達支援センターなどに相談し、場合によっては心理検査を受けたりしながら子供の特性を把握し、支援を行っていく必要があります。
遊び・非行タイプ
遊びのためや、何らかの非行グループに入ってしまって登校しなくなってしまったタイプです。
このタイプの不登校は小学生よりも中学生に多く、無断欠席や遅刻早退を繰り返し、登校しなくなっていきます。
子供の立場を理解しながら、時には注意や叱責も必要になります。
また、どんなに学校や家庭が努力しても、子供が交流している非行グループの影響が強くて対応に困る場合は、警察や児童相談所などの関係機関と連携しながらの対処が必要になります。
無気力タイプ
登校することへの罪悪感が少なく、なんとなく無気力で登校しないタイプです。
このタイプの場合は学校でのトラブルなどはないため、誘えば登校しますが、長続きしないことが多いようです。
理由がはっきりしないために解決に時間がかかり、周りが半ば諦めてしまうことも多いですが、放置せず、教師や友達が迎えに行ったりしながら根気強く支えていく必要があります。
本人に積極的に関わって、体を動かす遊びや運動に誘ったり、人との関わりを保ったり、家庭内での役割を持たせたりなど、生活に活気を持てるように促しましょう。
また、自尊心が低かったり、自分の存在意義が持てないためにやる気をなくし、その結果無気力になっていることもあるので、自分が大切にされているという感覚や自信を持たせるような取り組みができることが理想です。
不安など情緒的混乱タイプ
登校したいという気持ちはあるけれど、体調不良を訴えて登校できない、漠然とした不安があるなど、 不安を中心とした情緒的な混乱によって登校しないタイプです。
このタイプは、学校生活に起因することがきっかけで不登校となることが多いのですが、成長の過程で本質的な問題を含んでいることが多いようです。
成長の過程の問題とは、具体的には次のようなものが挙げられます。
- 母親との分離不安
- 周囲からの期待に応えようとがんばりすぎた結果の息切れ
- 我慢したり、自分の要求を上手に伝える事が苦手であること
- 家庭内の不和や生活環境の変化など、生活基盤の不安定さ
子供の状態を理解してあげながら、緊張や不安を和らげてあげることが大切です。
意図的な拒否タイプ
自分のやりたいことがはっきりしていて、学校に行く意義を認めず、登校しないタイプです。
このタイプは何らかの主張に基づいて、学校に行く意義を認めず、登校を拒否します。
一方的に説得しようとしたり接触を避けるのではなく、根気強く話し合いながら解決に導いていきます。
複合タイプ
いくつかの理由が複合して不登校の状態になっているため、一番主になる理由が特定できないタイプです。
どんな理由の複合なのかはその子次第ですが、不登校についてたくさんの情報を集め、子供の状況をできるだけ正しく把握して対応することが大切です。
そして、これはどのタイプにも言えることですが、原因の特定だけでなく、子供が不登校という行動によって何を訴えようとしているのか、そのメッセージを受け取ってあげることが重要です。
不登校の居場所となるフリースクール
不登校は誰にでも起こる可能性があり、決して問題行動でありません。
そのため、必ずしも学校に登校することだけを求めるのではなく、学校以外の居場所をつくる、という支援の形もあります。
学校以外の居場所としては、教育支援センター(適応指導教室)や民間のフリースクールなどがあります。
フリースクールは、不登校の子供に対して学習や様々な体験活動、教育相談などの提供を行っている民間の施設です。
平成27年度に文部科学省が調査したところ、全国で474の団体・施設が確認されているので、ぜひお住まいの地域で探してみて下さい。
子供だって辛いけど親だって辛い、その気持ちに蓋をしないで
最後に、子供が不登校になってしまった、もしくはなりそうだと思ったらすぐにでもやった方がいいことをお伝えします。
それは、一人で抱え込まずに誰かに相談するということです。
「子供が不登校」というと、なんとなく恥ずかしく思ってしまい、なるべく人に漏らさず家庭内で解決しなきゃと思っていませんか?
でも、不登校は決して恥ずかしいことではありませんし、家庭内だけで解決できることばかりでもありません。
何よりそうやって全てを自分一人で背負ってしまっては、親御さんが潰れてしまいます。
親御さんが元気でいられなければ、子供は責任を感じてしまい、自体が良い方向には動きません。
不登校は、もちろん子供だって辛いけれど、親だって辛いのです。
自分がしっかりしなきゃ、頑張らなきゃと肩肘張らずにたくさんの人に頼っていってください。
そして、辛い気持ちに蓋をしないで、辛い時は辛いと、今の現状と自分の気持ちを吐き出していってください。
学校や身近な人には相談しづらければ、文部科学省が設置している24時間子供SOSダイヤルという相談窓口もありますし、児童相談所、保健センターや児童発達支援センターなど、話を聞いてくれる窓口はいくつもありますので積極的に頼っていってください。
まとめ
不登校は、文部科学省によって「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義されています。
不登校になってしまう理由には、学校生活上の影響、あそび・非行、無気力、不安など情緒的混乱、意図的な拒否など様々なものがあり、それらが複合的に絡み合って、主な理由がはっきりしないパターンもあります。
子供が不登校になってしまった場合の対処法も理由によって様々ですが 、原因の特定だけでなく、子供が不登校という行動によって何を訴えようとしているのか、そのメッセージを受け取ってあげることが重要です。
子供が不登校だということは決して恥ずかしいことではありませんし、家庭だけで解決できるとも限りません。
一人で抱え込まずに誰かに相談し、たくさんの人に頼りながら解決に導いていってください。