グローバル社会が進む日本でお子さんが活躍できるよう、英語力が身に付く留学をさせたいと考えるママやパパは多いと思います。
留学方法にはさまざまな種類がありますが、中でも「交換留学」は耳にする機会が多いため、どのような留学方法なのか気になっていませんか?
しかし、
- どんなメリット・デメリットがあるのか
- お子さんの学年や能力によってどのようなルートで申し込めるのか
- お子さんが応募の基準を満たしているのか
など、わかりにくいことだらけですよね。
この記事ではまず、「交換留学のメリット・デメリット」や、「交換留学制度の種類」を簡単に解説します。
さらに、高校生・大学生の交換留学の具体的な「応募の条件と試験内容」や「留学費用や奨学金の利用」までをイメージできるような内容になっています。
お子さんの将来の留学に備えて、まずはしっかり基礎から準備すべきことまでを知っておきましょう!
交換留学とは?
交換留学とは、留学の専門団体や学校が互いの国の生徒を受け入れ、原則1年間(実質10カ月間)留学させる制度です。
個人で手続きを進めて自費で留学する「私費留学」とは異なり、交換留学は主催者を介し、
- 留学先の学費や滞在費が無料になる(公的な組織の交換留学プログラム)
- 留学の手続きや学習のサポートを受けられる
- 日本の学校に在籍しながら留学できる
などのメリットがあります。
留学プログラムへの参加は中学生から可能ですが、義務教育の間に1年間の留学をさせることには抵抗を持つママやパパも多く、高校生や大学生からチャレンジさせる人がほとんどです。
交換留学は子供にどんなメリットがあるの?
留学にはさまざまな種類がありますが、ほかの留学にはない交換留学のメリットとは何なのでしょうか。
ここではお子さんが交換留学をすることで、どんなメリットを得られるのか、具体的な内容をご紹介します!
異文化交流しながら英語学習できる
交換留学のそもそもの目的は、国の代表者として異文化交流をすることです。
しかし交換留学のメリットは、他国の文化に触れられる貴重な体験ができるだけではありません。
基本的には日本人のいない環境で英語を使うため、日常会話レベルの英語力も身に付きます。
高校生で交換留学をした筆者の友人の英語力は、留学前は英検準2級レベルでしたが、帰国後は日常会話や英文の手紙の筆記も難なくできるレベルになっていました。
在学しながら卒業できることもある
学校の制度によりますが、日本の学校に籍を置きながら、海外の学校で履修した単位を日本の学校の単位に変換できる場合もあります。
そのため、日本の学校を休学せずに留学でき、帰国後は1年上の学年に進級して卒業することも可能です。
筆者の友人も公立の高校2年生のときに留学しましたが、留学先の学校では卒業に必要な教科を履修し、帰国後は3年生に進級して同級生と同じ授業を受けて一緒に卒業しました。
学校によっては、留学期間中は休学扱いとし、帰国後は同級生の1学年下の学年で授業を受ける場合もあるので、事前に学校へ確認しましょう。
手続きが楽
私費留学はすべて自分で留学先を決めたり、手続きをしたりする手間があります。
しかし交換留学は、公的・民間組織の交換留学プログラムや、私立の学校の交換留学制度を利用すれば、留学先の選定や手続きをサポートしてもらえます。
費用が抑えられる
公的な組織の交換留学プログラムは、授業料や滞在費が無料となり、私費留学よりもかなり費用を抑えられます。
また、私立高校や大学の交換留学制度の利用でも、学校によっては授業料が免除されることがあるので、なるべく費用を抑えて留学したい人にはおすすめです。
就学・就職のタイミングがずれにくい
海外の学校は日本の学校とは学年の年度区切りが異なる場合がほとんどなので、帰国後に就学や就職のタイミングがずれることに悩む人も多くいます。
公的な団体が主催の場合、日本の教育課程の一環として行われていることが多く、日本での
就学や就職のタイミングがずれにくい特徴があります。
交換留学が子供に与えるデメリットは?
留学期間の短さや、手続きの手軽さ、費用の安さなどを見ると、交換留学にはメリットしかないように思えますよね。
しかし交換留学にはさまざまな規制があり、それをデメリットと感じる人もいます。
「こんなはずでは…」とお子さんが思うことのないよう、交換留学のデメリットもチェックしておきましょう!
選択の自由度が低い
交換留学では、応募した交換留学のプログラムに従って、留学する地域や学校(高校生の場合はホームステイ先も)が決まります。
そのため、行きたい地域や学校を自由に選べないことが特徴です。
公的組織の交換留学プログラムの留学先は都市部より田舎が多く、都市部の大学への留学に憧れている場合は、留学先にがっかりしてしまうこともあるかもしれません。
また留学期間は原則1年間なので、留学中に「留学期間を延長したい」と思っても基本的には変えられません。
そのため、英語を極める目的で留学をしたい人には向かないでしょう。
審査が厳しい
私費留学の場合は自分の能力に合った学校を選んで留学できますが、交換留学では厳しい審査を通過する必要があります。
交換留学の審査では語学力が重視される場合がほとんどで、募集人数も少ないため、必ず留学できるとは限らないのです。
応募資格の時点で「英検何級以上、英語力のテストのスコアが何点以上であること」が必須となる場合もあり、応募することすら叶わない場合もあります。
交換留学の応募を考えている場合は、参加する交換留学プログラムの応募条件や審査方法を事前に確認し、応募条件に合った英語力を養っておきましょう。
期間が短い
交換留学の留学期間は原則1年間のため、海外の学校で専門的な学問を身に付けたいと考えている場合は、期間が少々短いと言えます。
しかし日常会話レベルの英語の上達や、自立心の向上を目的とする場合はちょうどよい長さの期間でしょう。
海外の学位はとれない
交換留学は海外の学校を卒業することが目的ではないため、海外の大学の学位を取得することはできません。
学位を取得する場合は、私費留学で海外の大学に入学し、4年間通って卒業する必要があります。
交換留学は英語力の向上には適していますが、専門的な知識を得るためには適さない留学方法と言えます。
交換留学制度は主催者によって3つのタイプに分けられる
交換留学制度には日本で昔から行われてきた公的な組織の制度に加え、学校や民間企業が独自に実施している制度もあります。
ここでは、主催者によって異なる3タイプの交換留学制度の特徴を見ていきましょう!
それぞれのタイプの交換留学制度から、お子さんに合ったタイプがどれなのか、参考にしてみてください。
タイプ1:公的な組織が主催する交換留学制度
国・地方自治体・国際交流団体などの公的な組織が主催している交換留学制度は、日本では昔から実施されてきた伝統的な制度です。
毎年、お互いの国が同じ人数ずつ学生を交換することが義務になっています。
国際交流団体とは、
- AFS(公益財団法人アメリカンフィールドサービス)
- YFU(公益財団法人ユース・フォー・アンダースタンディング)
- JFIE(特定非営利活動法人日本国際交流振興会)
などのような、営利を目的としないボランティア団体のことです。
このタイプの交換留学制度の特徴は、
- 滞在費・学費が無料なので費用を最小限に抑えられる
- 留学期間は1年間のみで、短縮も延長もできない
- 留学先の学校は公立のみ
- 国の代表として国際交流することを目的としているため選抜基準が厳しい
- 高校生向けのプログラムが多い
- 留学先の国は選択できるが、地域や学校は選択できない
- 留学先の手続きやビザ発行などのサポートを受けられる
などがあります。
応募枠が少なく、高い英語力をもつことが応募条件となるため選抜は厳しいですが、費用を最小限に抑えながら留学できるメリットがあります。
タイプ2:学校が主催する交換留学制度
中学・高校・大学が主催している交換留学制度は、協定を結んでいる学校同士で同じ数の学生を交換します。
このタイプの交換留学制度の特徴は、
- 滞在費・学費が無料なので費用を最小限に抑えられる
- 留学期間は1年間のみで、短縮も延長もできない
- 留学先の学校は公立のみ
- 国の代表として国際交流することを目的としているため選抜基準が厳しい
- 高校生向けのプログラムが多い
- 留学先の国は選択できるが、地域や学校は選択できない
- 留学先の手続きやビザ発行などのサポートを受けられる
などがあります。
こちらはタイプ1の公的組織が主催する交換留学制度とは異なり、学費は無料でも滞在費は有料なケース、学費と滞在費が共にかかるケースもあり、費用のかかり方は「私費留学」に近いイメージです。
タイプ1の留学よりも費用はかかりますが、学校内で留学に必要な知識を付けられ、生徒の能力に合った留学先を選択できるメリットがあります。
タイプ3:民間の企業が主催する交換留学制度
タイプ3の交換留学制度は、「留学エージェント」と呼ばれる民間の留学サポート企業が、私費留学を交換留学プログラムとして紹介しているタイプです。
海外の公立・私立高校と提携して、1年間限定で有料の留学枠をつくり、交換留学として紹介します。
このタイプの交換留学制度の特徴は、
- 滞在費・学費が無料なので費用を最小限に抑えられる
- 留学期間は1年間のみで、短縮も延長もできない
- 留学先の学校は公立のみ
- 国の代表として国際交流することを目的としているため選抜基準が厳しい
- 高校生向けのプログラムが多い
- 留学先の国は選択できるが、地域や学校は選択できない
- 留学先の手続きやビザ発行などのサポートを受けられる
などです。
タイプ1と2の交換留学制度は、留学期間は原則1年間と決められている場合や、学校を自由に選択できない特徴があります。
一方でこのタイプの交換留学制度では、留学エージェントや留学先の学校の制度によって留学期間を延長できる場合があり、さらに留学先も選択しやすいメリットがあります。
交換留学という名の私費留学のような位置づけなので、どうしても負担額は多くなりがちです。
しかし企業によっては政府の「留学派遣支援金制度」を受けられる場合もあるため、費用の支援を受けながらの留学も可能です。
交換留学の応募から留学までの流れを解説!
ここでは交換留学を希望する人が多い高校生や大学生向けに、
- 応募条件
- 選考方法
- 募集時期/li>
- 合格後から留学までの流れ
をご紹介します。
事前に知っておくことで、交換留学の応募開始までに応募条件を満たす準備ができ、スムーズに申し込みを進められますよ。
高校生の交換留学
高校生の交換留学の応募条件は、公的な組織(タイプ1)の主催であるか、学校や民間企業(タイプ2か3)の主催であるかによって、選考方法が大きく異なります。
具体的な違いを見ていきましょう。
応募の条件
公的な組織であるJFIE、AFSの交換留学プログラムの応募条件をご紹介します。
JFIEのホームページに記載されている応募条件は、ここから紹介する9つです。
- 留学時点で日本の高校・高等専門学校に在籍しており、留学終了後は在籍校に復学できること
- 現地校での授業開始時に各国の条件を満たす年齢であること(アメリカは15歳~18歳6カ月未満、オーストラリア・ニュージーランド・カナダは15歳~17歳、イギリスは16歳~18歳まで)
- 日本在住者で保護者または保証人が日本に在住していること
- 留学目的がしっかりしており、保護者から同意、理解を得ていること
- 心身ともに健康であり、プログラムルールを厳守して、勉強・生活ができること
- 国際交流に関心があり、本プログラムの趣旨をよく理解していること
- 学業成績が平均以上であり、中学1年次から現在までの各学年の欠席日数が8日未満であること。また、遅刻・早退の日数が極端に多くないこと
- 事前のオリエンテーションに参加し、規定書類を期限までに提出できること
- 現地団体および弊会が設定している交換留学先各国の英語テスト基準を満たし、選考試験(書類選考・保護者同伴面接)を通過できること
AFSの交換留学プログラムに参加するためには、ここから紹介する6つの条件をクリアしている必要があります。
- 異文化体験に対する興味と意欲をもち、留学先での生活に心身ともに適応できる資質があること。カウンセリング又は投薬治療を受けていた場合、応募する年の4月時点で治療終了後12カ月が経過していること
- 応募する年の4月の時点で、学校教育法が定める日本の高等学校・高等専門学校又は専修学校高等課程の第1、2学年に在学する人
- 対象となる生年月日の範囲の生まれであること
- 応募時点で学業成績が中程度以上であること。特に、スイス希望者は学業成績が上位1/4以内であること。アメリカ希望者は学業成績が上位3/4以内であること
- 在学校の学校長から推薦されること
- 希望する国の制約条件に抵触しないこと
どちらの組織も、
- 年齢や成績、出席状況が基準を満たしているか
- 留学目的がはっきりしているか
- 心身共に健康であるか
などが主な条件です。
学校からの推薦で応募する場合は、英検準2級以上を取得していることが条件になりますが、一般応募では英語の資格の取得は必須ではありません。
しかし留学先へ出発するまでに、英検準2級を取得することが望ましいとされています。
私立の高校や、民間企業が主催する交換留学プログラムでも基本的には、
- 留学先の学校が求める成績や出席日数を満たしているか
- 留学目的がはっきりしているか
- 英検準2級を取得しているか
などが応募条件となっている場合が多いです。
選考方法
選考方法は、公的な組織と民間企業の交換留学とでは、難易度が異なります。
公的組織の交換留学は、留学者の人数が決められている点や、学費や生活費が無償という点から、競争率が厳しいことが特徴です。
組織によって選考方法は微妙に異なりますが、
- 学校の成績
- 一般教養のテスト
- 面接
- 英語の試験・作文
が主な内容です。
一般教養のテストでは、高校で学習した内容や時事問題などのテストを行います。
面接は、
- 留学の目的や計画がしっかりしているか
- 高校生の交換留学生の代表として適した人物であるか
- ある程度の語学力があるか
をテストすることが目的です。
英語の試験では、語学力や一般教養のテストが行われます。
テストを通過したあとは、アメリカの高校へ留学する場合、ELTiS(エルティス)という英語判断力テストの結果を提示することが必須になっています。
AFSでの選考基準では、ELTiSの点数が213点以上(8割以上の点数)が条件です。
ELTiSでは、文法や長文読解、会話だけでなく、計算や統計などの一般教養問題を英語で回答します。
一方で、民間企業の交換留学プログラムは、学生の能力に合わせて留学先を決定するため、選考に英語の試験はなく、高校の成績や書類審査のみの場合が一般的です。
しかし志望する留学先の高校によっては、英語資格のスコアを提示する必要があります。
私立高校の交換留学制度を利用する場合は、学校によって選考方法が異なるため、入学前に交換留学制度について調べておいた方がよいでしょう。
募集時期
交換留学の募集時期は、留学を開始する1年~1年半前からを目安に、4月くらいから開始します。
高校留学を開始する時期は、各国の学校の年度区切りに合わせて決められています。
海外の学校の年度区切りは冬期(1~2月)と夏期(9月)のどちらかがほとんどで、それに合わせて留学を開始するためです。
年度区切りの時期は、
- オーストラリアやニュージーランドなどの南半球…冬期
- アメリカやカナダ、イギリスなどの北半球…夏期
となる傾向があります。
冬期に留学を開始する場合は前年の5月か6月末くらいまで、夏期は留学を開始する前年の12月くらいまでに募集が終了します(一次募集、二次募集を含む)。
募集時期は交換留学を主催する組織や留学を希望する国によって異なるので、事前に調べておきましょう。
応募から留学までの流れ
ここからは交換留学の申込手順について、AFSの申込手順を参考にしてご紹介します。
AFSでは留学までの間に、下の14つの工程を実施します。
- 応募する留学組織の資料請求をする(随時)
- 説明会に参加する(出発の1~1年半前)
- 応募する
- 受験する
- 応募が締め切られる(出発の7〜8ヵ月前頃)
- 合否の発表がされる(受入国の内定)
- 参加費を支払う(一次金)
- オリエンテーションへ参加する(出発の3〜5ヵ月前頃)
- ELTiSを受験する
- 英文書類作成をする
- 家庭訪問を受ける
- 受入国の審査を受ける(受入国決定)
- 参加費を支払う(二次金)
- 配属が決定する(出発の1ヵ月前頃)
ここまで完了すると、晴れて留学となります。
民間企業や学校が主催の場合は、それぞれ必要な手順が異なりますので、事前に調べることをおすすめします。
大学生の交換留学
大学では、協定を結んだ海外の大学への交換留学が一般的です。
交換留学制度があり、留学する生徒数・協定国数・協定校数の多い大学は、
- 立命館大学(国際関係学部)
- 関西外語大学(英語キャリア学部など)
- 早稲田大学(国際教養学部)
- 関西学院大学(国際学部)
などが有名です。
それぞれの大学によって応募条件、選考方法、応募方法は異なりますが、ここでは大学で共通しているポイントについて解説します。
応募の条件
応募の時点で、
- TOEFL(トーフル)などの英語力のテストのスコアが基準以上であること
- 高い英語力があること
- 学業の成績が基準を満たしていること
などが条件になります。
留学先の大学によって求められる基準は異なるため、志望する大学の応募条件を早めに確認しておきましょう。
留学先の大学は、TOEFLiBTのスコアは最低でも60以上、IELTS(アイエルツ)では5.5以上のスコアを必要とする場合がほとんどです。
応募までの間に応募条件を満たすために、きちんとした学習計画をする必要があります。
選考方法
書類選考(志望理由・履修計画・語学能力・学業成績など)や、面接などがありますが、大学によって異なるので事前に調査することをおすすめします。
面接では、
- 留学先の言語による質疑応答で語学力のテスト
- 日本語での質疑応答で留学の目的や進路の志望の確認
- 留学先の大学で授業を受けられるだけの専門的な知識が身に付けられているかのチェック
などを行います。
募集時期
日本の大学は3学期制が一般的ですが、海外の大学は春学期と秋学期の2学期制がほとんどです。
さらに留学先の国によっては、
- 春学期から始まる場合(2・3月~12月の約10カ月間)
- 秋学期から始まる場合(8月~翌年5・6月の約10カ月間)
があります。
春学期・秋学期から始まる国への留学を募集する時期は、
- 春学期から始まる国への留学…前年の4月~6月(一次募集、二次募集を含む)
- 秋学期から始まる国への留学…前年の7月~11月(一次募集、二次募集を含む)
などが目安になりますが、大学によって異なるので事前に確認しましょう。
応募から留学までの流れ
大学の交換留学もまた、高校と同様に、留学を開始する予定の1年半~1年前に準備を開始します。
交換留学プログラムへの応募から留学までの流れは、
- 留学を希望する大学の応募条件を調べる
- TOEFLiBTやIELTSなどの語学力テストで応募に必要なスコアを取得する
- 大学の交換留学制度の募集要項を確認する
- 交換留学制度に応募する
- 書類選考や面接を受ける
- 合格後に必要書類を受け取る
- 留学のためのガイダンスに参加する
のような流れであることが一般的です。
交換留学でかかる費用はどれくらい?
高校と大学の交換留学では、かかる費用に差があります。
それぞれの費用の違いを比較してみましょう。
高校の交換留学の費用
高校の交換留学の費用は公的な組織が主催している場合、
- プログラムへの参加費…120万~200万円(プログラムによって異なる)
- 渡航費…アメリカは9万~14万円、オーストラリアは7万~12万円、カナダは10万~15万円、イギリスは10万~15万円
- 生活費…月5万~10万円(日用品購入費、お小遣い、お昼代など)
- 制服代…制服がある場合のみ
などの費用と、ビザ手数料・保険代・健康診断・予防接種費などが別途にかかります。
私立高校や民間企業の交換留学の費用は、さきほどご紹介した費用に加えて学費や寮費を支払う場合が多く、私費留学とあまり変わりません。
学費・寮費・給食費を支払う場合、アメリカの私立高校であれば約250万~500万、アメリカの公立高校の場合は約150万はかかってしまいます。
いかに公的な組織の交換留学は、費用が抑えられるかがわかりますね。
しかし記事の最後の方でご紹介する奨学金やを利用して、負担額を減らす方法もあります。
大学の交換留学の費用
大学の交換留学制度を利用した場合、留学先の大学の授業料は免除になりますが、
- 教科書代…月5万~20万
- 寮やホームステイの滞在費…月8万~10万
- 食費…1万~3万円
- 日用品やお小遣いなど…1万~2万円
- 渡航費…アメリカ:9万~14万円、オーストラリア:7万~12万円、カナダ:10万~15万円、イギリス:10万~15万円
- 交通費…電車やバス代。田舎の場合は車が必要になる場合もある。
などの費用に加えて、ビザ手数料・保険代・健康診断・予防接種費などがかかります。
公的な組織が主催する高校の交換留学に対して、教科書代や滞在費がかかる分、費用は高額になります。
しかし大学独自の奨学金の利用によって、負担額を減らすことも可能です。
お金に余裕がない場合は奨学金制度を活用しよう!
公的な交換留学プログラムは、学費や滞在費は無料になることが魅力ですが、プログラムへの参加費として平均120万~200万の費用がかり、生活費も別途にかかります。
学校や民間企業の交換留学制度を利用する場合は、より高額な費用を用意する必要があります。
留学費用を家庭でまかなうことが難しい場合は、留学をあきらめるのではなく、奨学金制度を利用しましょう。
ここでは高校生と大学生の交換留学で利用できる、返済不要の奨学金制度の一部をご紹介します。
高校生が対象の奨学金制度
高校生が対象の奨学金制度は、国や地方自治体、公的機関、企業などで実施されています。
ここでは国が主催する奨学金制度や、AFSの留学プログラムに参加する高校生を対象にした奨学金制度をご紹介します。
ここで紹介するものは数ある奨学金制度の一部ですので、お住まいの地方自治体や、公的な組織の留学プログラムが実施している奨学金制度などを調べてみましょう。
トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム
文部科学省と民間企業が提携して留学を支援する制度で、2014年から2020年までに1万人の高校生と大学生を海外へ留学させることを目的としたプロジェクトです。
新型コロナウイルスの影響で2020年の実施分を2021年まで延長していますが、2022年以降の実施は検討中となっています。
高校生向けのプログラムでは、語学力と成績は不問で、私費留学・交換留学に関係なく14日~1年間の自由な留学を計画できることが特徴です。
支給対象となる基準は「機構第二種奨学金に掲げる家計基準を満たすこと」としています。
基準を満たすおおよその家計基準の目安は、両親と中学生の子供と高校生の子供がいる4人家族では、世帯年収が1,100万円未満程度です。
基準を満たした学生で107~365日間の留学をする場合、
- 留学先機関における授業料相当額(学費・登録料)…30万円
- 現地活動費…14万円(北米・欧米・中近東)、12万円(大洋州・中南米・アフリカ)、10万円(アジア)
- 往復の渡航費…10万円(アジア)、20万円(アジア以外)
- 事前・事後研修参加費(会場や高校所在地による)…会場が東京都で、福島県の高校に通う学生の場合は1万円が支給
のように、かなり幅広く手厚い給付を受けられます。
家計基準を超える収入がある世帯でも、給付額は減りますが支給対象となる可能性はあります。
三菱商事高校生海外留学奨学金
AFSの交換留学プログラムを利用する高校生向けに、三菱商事が2019年12月に新設した奨学金制度です。
AFSの交換留学プログラムへの参加者(全国対象)が、経済的な理由で参加費の支払いが難しい場合、参加費の全額を給付する返済不要の奨学金制度です。
毎年最大60名が選ばれます。
AFS山形ふるさと奨学金
各地方自治体にも、留学をする高校生向けの奨学金があります。
「AFS山形ふるさと奨学金」は、AFS留学プログラムに参加する山形県内の高校生向けの奨学金制度で、1人あたり50万円が給付されます。
返済が不要な奨学金で、毎年の寄付金に応じて数名が選ばれます(2019年度は2名)。
成績が優秀で、保護者の給与等の年間収入の合計額が800万円以下であることが応募条件です。
東海東京財団留学奨学金
AFSの留学プログラムに参加する愛知県の高校生を対象に、一般財団法人東海東京財団が実施している奨学金制度で、1人あたり100万円が給付されます。
学業と人物が優秀で、保護者の給与等の年間収入の合計額が1000万円以下であることが応募条件で、毎年最大5名が選ばれます。
大学生が対象の奨学金制度
大学生の交換留学でも、国や公的機関などが実施しているさまざまな奨学金制度を利用できます。
ここでは、返済不要の奨学金制度をご紹介します。
トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム
大学生向けのプログラムでは、
- 日本の国籍がある、もしくは日本の永住権を取得している
- 留学する年の4月時点で30歳以下である
- 日本の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)に在籍する学生である
という条件を満たす人で、28日間から1年以内の留学が対象になります。
語学力や成績の基準を設けておらず、留学計画の実現性が評価されます。
支給対象となる基準である「機構第二種奨学金に掲げる家計基準を満たす」場合は、「大学全学コース」の対象となり、基準を超える収入のある世帯は「大学オープンコース」の対象です。
大学全学コースの場合の給付額は、
- 奨学金…月額16万円(北米、シンガポール、欧州、中近東)、月額12万円(アジア・大洋州・中南米・アフリカなど)
- 留学準備金…15万円(アジア)、25万円(アジア以外)
- 授業料…60万円(1年以上の留学)、30万円(1年以内の留学)
のように、手厚い給付が受けられます。
大学独自の奨学金との併用も可能なので、私立大学での交換留学でも費用を抑えられます。
公益財団法人みずほ国際交流奨学財団「日本人奨学生」
みずほ国際交流奨学財団が実施している、日本の大学生を対象に留学費用の支援を最大1年間行う奨学金制度で、大学からの推薦が必要です。
大学の選考により交換留学が確定しており、世帯主の収入が800万円以下であることなどが目安になっています。
支給内容は、
- 奨学金…月額10万円
- 渡航費(航空券代)…往復1回分の航空券(エコノミー)実費相当額
と手厚い内容です。
しかし奨学金給付期間中は、他の(民間)奨学財団等からの奨学金受給は不可となっています。
日本学生支援機構の海外留学支援制度「協定派遣型」
日本の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校の学生を対象に、8日以上1年以内の留学の費用を支援する制度です。
給付額は留学先の大学の地域区分によって異なり、
- 奨学金(月額)…指定都市は10万円、甲地区は8万円、乙地区は7万円、丙地区は6万円
- 渡航支援金…16万円(一定の家計基準を満たす者に限る)
となっています。
留学先の地域区分は、日本学生支援機構のWebサイトで記載されているこちらの表を参考にしてください。
給付の対象となるためには、英語能力テストのスコアが基準以上(TOEFLの得点がPBT550点、iBT80点、又はIELTS6.0以上)であることが必要です。
埼玉発「世界行き奨学金(地域活躍コース)」
地方自治体が実施する奨学金制度には、大学生を対象としたものもあります。
埼玉発「世界行き奨学金(地域活躍コース)」は、埼玉県に1年以上住んでいる大学・大学院・短大生(受給者か親のどちらかが1年以上住んでいる)か、埼玉県の大学・大学院・短期大学に在籍している人が対象となる奨学金制度です。
1カ月以上の留学、インターンシップ、英語プログラムまたはボランティアなどの活動が給付の対象となり、支給額は20万円となっています。
まとめ
交換留学は1年間という限られた期間の中で、異文化交流を行うことが目的の留学方法で、
- 異文化を学びながら日常会話レベルの英語力が身に付く
- 海外の学校に留学しながら日本の学校を卒業できる場合もある
- 公的な組織のプログラムでは学費と滞在費が無料になる
- 留学の手続きや学習のサポートを受けられる
などのメリットがあります。
ご紹介したデメリットも理解した上で、お子さんが望む留学方法をお子さんと一緒に考えましょう。
交換留学を希望する場合は、主催する組織によって応募条件や選考方法が異なりますので、お子さんに合った組織のプログラムを留学予定の1年半前から検討することをおすすめします。
交換留学であっても、生活費や渡航費、教科書代などもプラスすると、一般的な収入の家庭で用意することは難しい金額が必要になります。
しかし経済的な理由で、お子さんの留学をあきらめるのはつらいですよね。
日本には、国や地方自治体、公的機関、民間企業などのさまざまな奨学金制度があります。
記事でご紹介した奨学金制度や、お住まいの自治体、通学する学校などの奨学金制度を組み合わせて活用することをおすすめします。
お子さんと将来についてしっかりと話し合い、お子さんにとってベストなタイミングで留学ができるよう、準備を進めていきましょう!