知能検査は心理検査の一つで、知能の発達速度や能力を知るための検査です。
就学前健診でおこなわれる他、発達障害の可能性がある場合、乳幼児健診やかかりつけの小児科で知能検査をすすめられることがあります。
発達障害だと判断する検査ではありませんが、医師が検査結果を判断材料として使用するツールの一つです。
この記事では、子供の知能検査の種類・発達検査との違い・費用・知能検査を受けるメリットについて解説します。
知能検査とは?検査を受けるメリット
知能検査とは、前述した通り子供の知能発達速度や能力を知るためのもので、発達障害の判断材料になります。
検査を受けて、子供本人と親にどんなメリットがあるのでしょうか。
子供に合ったサポート方法がわかる
知能検査をすすめられるのは子供に発達障害の可能性があるからと前述しましたが、発達障害の子供は普通の生活のなかでたくさんの困難を抱えています。
例えば、「保護者や先生からの指示を理解しにくい」「がんばって勉強しているのにできない」などです。
知能検査では、苦手なことと得意なことが数値化されるので、その子に合ったサポート方法がわかります。
文字を読むのが苦手なら、音読や録音で耳から覚えたりイラストを使って学習したり、学習方法のヒントになります。
学習方法がわかれば、保護者や先生の教えるストレスも減らすことが可能です。
子供自身が自分を理解するきっかけになる
学校などの集団生活では、子供自身「周囲と同じできない」「がんばっているのにわからない」と強いストレスを感じている場合があります。
知能検査の結果で苦手と得意を知ることで、子供自身が自分を理解するきっかけになるでしょう。
子供自信が苦手を理解することで、周囲へ理解求めたり助けを求めたりを伝えやすくなります。
療育手帳取得や特別支援学校での教育の判断材料になる
知能検査の結果は、医師が発達障害の診断に使用するだけでなく、療育手帳取得や特別支援学校に通うための判断材料としても使われます。
療育手帳は、発達支援センターに通うのに使う他、減税や公共機関のサービス利用対象で保護者の負担が軽減されます。
知的障害をともなう発達障害の子供は特別支援学校の対象なので、子供の自立を促す教育を受けさせることが可能です。
知能検査と発達検査の違いは?
発達障害の可能性があると知能検査をすすめられると前述しましたが、「知能検査」と「発達検査」があるので、違いに疑問を持つ方もいるでしょう。
知能検査は認知面の特徴を知る検査で、知能の程度を科学的・客観的に測定します。
「同じ年齢の子供と比べてどの程度知能を持っているか」「言語や記憶など知能のバランスが整っているか」を見て、知能や学習での特徴を知る検査です。
一方発達検査は、精神発達の程度を測定します。
運動・自立・言語・社会性などを検査して「同じ年齢の子供と比べてどの程度発達しているか」などの発達バランスや、心身の発達を総合的に見る検査です。
知能検査の種類と内容
知能検査には集団検査と個別検査があり、発達障害の可能性で検査を受ける場合、個別検査がほとんどです。
比較的よく扱われる個別検査を3つ解説します。
ウェクスラー式知能検査
ウェクスラー式知能検査は、世界で最も広く使用される代表的な児童用知能検査です。
年齢で下記のように検査内容が分けられます。
実施時間は、ウィクスとウェイスが約90分、ウィプシーが約60分です。
ウィクスラー式知能検査では、知能を数値化するIQと、「言語能力」「知覚推理」「処理速度」「ワーキングメモリー」の4つが算出されます。
「注意欠陥」「多動性障害(ADHD)」「学習障害」などの発達障害を診断するツールとして使用する医師もいます。
田中ビネー知能検査
田中ビネー知能検査は、海外で作られたビネー法を日本人向けの内容にしたもので、最新版は「田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)」です。
2歳〜成人まで検査可能で、実施時間は60分〜90分。
発達状態や障害があるかを判断する材料として使用され、検査で算出された精神年齢と子供の実年齢との比からIQを算出します。
小学校に入学する年齢向けに「就学児版田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)」という検査もあります。
他の知能検査と比べると手順が簡易化されているので、検査を受ける子供や検査実施者の負担が少なくて済むのが特徴です。
KABC心理・教育アセスメントバッテリー
KABC心理・教育アセスメントバッテリーは、知能検査では唯一基礎学力を計る学習習得度の評価を入れているのが特徴です。
学習支援を目的とした知能検査で、「認知尺度(認知処理能力)」と「学習尺度(基礎学力)」を判定します。
2歳半〜18歳まで検査可能で、検査時間は30分〜60分です。
知能検査の受け方と費用
知能検査を受けるとき、「どこで受けられるのか」「費用はどれくらい必要なのか」は事前にチェックしたいことです。
検査までの流れと費用について解説します。
知能検査の受け方
知能検査は、精神科や臨床心理士のいる病院や、発達支援をおこなっている施設などで受けられます。
まずは住んでいる自治体の窓口に問い合わせますが、自治体によって相談窓口の名前が違うので、一部を紹介します。
自治体窓口では検査が受けられる施設を教えてくれるので、相談してみましょう。
かかりつけの小児科で知能検査を進められた場合、その小児科から検査可能な病院を紹介してもらうケースもあります。
知能検査の費用
知能検査の費用は、病院施設や実施している検査によって異なるので、事前に直接問い合わせておくと安心です。
費用ですが例えばウィクスラー検査や田中ネビー検査の場合、診察に必要だと医師から認められた場合は保険内診療となり、「こども医療費補助」が使える年齢なら、窓口負担は軽く済みます。
一方、保険外診療で全額自費になる場合があるので注意が必要です。
- 診察に必要だと認められない場合
- 保護者の希望でおこなう場合
- 病院や施設が独自に設定した保険外プランがある場合
保険外診療の検査費用は病院や施設によって異なりますが、だいたい1万円〜2万円です。
まとめ
知能検査は知能発達や能力を測定する検査で、発達障害の判断ができるわけではなく、医師による判断材料の一つです。
紹介した代表的な3つの知能検査は実施する施設によって料金が異なり、保険診療なら少ない負担で済みますが、自費になることもあります。
障害を見つけるためというよりも、「何が得意で何が苦手か」と知ることで、子供のサポート方法を知るための検査です。
子供の得意と苦手を数値化してくれるので、学習方法の指針になることはもちろん、子供の「できない」の解決のいとぐちになりますよ。