特別支援学校と聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか。
障害がある子供が通う学校だということはわかるけれど、身近で通った人も知らないし、中を見る機会もないし、どんな学校なのかイメージしづらいのではないかと思います。
この記事では、特別支援学校の基本情報から入り方、学ぶ目的や卒業後の事まで、特別支援学校に関する疑問を解決していきます。
特別支援学校もいろいろある?種類や対象をご紹介!
特別支援学校は、障害の種類によって学校が分かれます。
二つ以上の障害をあわせ持っている子供の場合は、どの障害に対する配慮をより必要としているかで、最も適した進学先を選びます。
ここでは、特別支援学校の種類と対象となる障害の程度について、説明します。
知的障害の特別支援学校
知的障害があると、知的障害を主障害とする特別支援学校に入学できます。
知的障害の特別支援学校へ入学が可能な障害の程度は、学校教育法でこれからご紹介するように定義されています。
ポイント
“一 知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの
二 知的発達の遅滞の程度が前号に掲げる程度に達しないもののうち、社会生活への適応が著しく困難なもの”(引用 文部科学省 特別支援教育について)
知的障害の特別支援学校では「自閉症クラス」がつくられている事があります。
自閉症などの発達障害は、それだけでは特別支援学校への入学要件を満たすことはできません。
ただし知的障害を伴っていれば、特別支援学校でより専門的な教育を受けることができます。
肢体不自由と病児の特別支援学校
肢体不自由があると、肢体不自由を主障害とする特別支援学校に入学できます。
また、重い病気を抱えている場合も、特別支援学校に入学できます。
肢体不自由と病児、どちらも医療的ケアが必要になる場合がありますよね。
肢体不自由、病児の特別支援学校は、医療的ケアと、車いすでの移動がスムーズである事が特徴です。
肢体不自由、病児の特別支援学校へ入学することが可能な障害の程度は、学校教育法でこれからご紹介するように定義されています。
ポイント
“一 肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの
二 肢体不自由の状態が前号が掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの”
“一 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの
二 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの
”(引用 文部科学省 特別支援教育について)
肢体不自由、病児向けの特別支援学校は、それだけで独立していることもあれば、知的障害の特別支援学校と一緒になっていて、コースやクラスで分けられている場合もあります。
盲学校や聾学校
特別支援学校の一種として、視覚障害を対象とした盲学校、聴覚障害を対象とした聾学校があります。
盲学校、聾学校は障害の特性的に、他の特別支援学校とは一線を画しています。
これらの学校も他の支援学校と同じく、障害に応じた専門的で手厚い学びの場になっています。
特別支援学校にはいつからいつまで通えるの?
普通の学校に小学校、中学校、高校があるように、特別支援学校も、小学部、中等部、高等部と分かれています。
小学部から高等部までエスカレーター式に一つの学校でまとまっている所もあれば、小学部と中等部で一つ、高等部は別、と分かれている所もあります。
小学校と中学校は普通の学校で学び、高等部から特別支援学校に入学する、ということもできます。
比べてみました!特別支援学校と特別支援学級の違いはなに?
特別支援学校と似たような言葉で、特別支援学級があります。
特別支援学級は特別支援学校と違い、支援を必要とする子供のための学級が普通の小学校の中にあるというスタイルです。
障害が知的障害の場合、軽度の知的の遅れでしたら、支援学級を選択することが多いです。
でも、障害の程度によって支援学校、支援学級に振り分ける厳密な基準はないので、どちらにしようか悩む親子は多いでしょう。
ここでは知的障害に絞って、特別支援学校と特別支援学級の違いを比較します。
授業内容
特別支援学校では、勉強よりも身の回りのことを自分で出来るようになることに力を入れています。
教科の学習は、カリキュラムに沿って一律に進めるわけではなく、それぞれの習熟度にあわせて学んでいきます。
教科書もありません。
対して特別支援学級は、普通の学校と同じく、勉強することを目的としています。
普通級よりもゆっくりの速度では進みますが、学ぶ内容は同じです。
特別支援学校と特別支援学級の大きな違いは、学ぶ目的が、身の回りのことを自分で出来るようになることなのか、勉強なのか、どちらに重きをおいているかということなのです。
クラスの構成
特別支援学校は1学級あたり6人を標準人数として定められていますが、特別支援学級は1学級あたり8人が標準人数です。
つまり、特別支援学校の方がより一層、先生の目が一人一人に行き渡りやすい環境です。
教員
クラスを受け持つ教員の免許状にも、違いがあります。
特別支援学校の教員は、原則として教諭免許状の他に特別支援学校教諭免許状が必要です。
対して特別支援学級の教員は、教諭免許状以外の免許状を持っていなくてはならないなどの規定はありません。
送迎の有無
特別支援学級は、親が毎日学校まで送迎する必要があります。
でも特別支援学校だと、スクールバスの送迎があります。
家から学校までが遠くてもバスで送迎してもらえるので、親の負担はかなり減ります。
特別支援学校卒業後に期待できること
障害児を育てていると、目の前の事でいっぱいいっぱいになってしまいがちです。
でも真に大事なのは、10年後、20年後の子供の姿です。
将来どんな生活を送っていてもらいたいか、そこに辿り着くために最も必要な進路を考える事が大切です。
では、特別支援学校を選択すると、将来に向けてどんなことが期待できるのでしょうか。
身の周りの自立こそが特別支援学校の肝
障害が比較的重い場合、大人になっても自分の身の周りのことを自分ですること、つまり身辺自立が難しい場合もあります。
でももし将来、社会に出て健常者の中で生活していくとしたら、身辺自立は何よりも大切なことです。
自分のことがどれだけ自分でできるかが、就職する際の採用にも大きく関わってきます。
特別支援学校では、身の回りのことを自分で出来るようになることを一番の優先事項として取り組みます。
短時間では習得が難しくても、何年もかけて、できることを増やしていけます。
就職を見据えたカリキュラム
特別支援学校は、卒業後の就労に向けた支援に早い段階から取り組みます。
特に高校になると、就職を意識した技術の習得や、実際にやる作業の練習などの職業訓練が組まれます。
作業所の見学や体験も頻繁にあり、何度も通って慣れていくことができます。
このように、普通の学校ではフォローしきれないような障害者の就職にむけての支援が手厚いのが、特別支援学校の魅力です。
親の心を軽くする、特別支援学校という選択肢
障害児の親にとって、いつも精神的負担になるのは障害がない子供との比較です。
同年齢の障害がない子供と自分の子供との違いに落ち込んだり、障害がない子供の集団の中で浮いてしまう自分の子供に悲しくなったりした経験は、誰しもあると思います。
特別支援学校に通うと、必然的に障害がない子供と比較する機会が減ります。
学校のスタンスも個々の成長にあわせて学んでいく方針なので、周りと比較せず、自分の子供の成長だけを見つめることができるでしょう。
ただ、障害がない子供と接する機会が減るというのは、デメリットでもあります。
子供は、子供同士のコミュニティの中で成長していくという側面があるからです。
何ごとにも良い面があれば悪い面もある、これは致し方のないことです。
それでも、いつも周りと比較してしまうことがつらい親御さんにとっては、特別支援学校は心の安定にも大きく貢献してくれると思います。
特別支援学校に入学するためにやるべき事
特別支援学校に入学するために、やっておくべきことをご説明します。
就学相談
特別支援学校に入学するためには、住んでいる自治体の教育委員会で就学相談を受ける必要があります。
就学相談を受けなければ、特別支援学校に入学することはできません。
まずは就学相談に申し込み、指定された必要書類を揃えて就学相談を受けることが、特別支援学校に入学するために絶対に必要な事です。
学校見学・説明会
特別支援学校への入学を考えているなら、就学相談だけでなく、実際に特別支援学校の学校見学に行く事をおすすめします。
百聞は一見にしかずです。
足を運んでみる事で、具体的な学校生活や授業の様子がよくわかります。
学校見学の後に説明会が用意されていることも多いです。
事前に学校に問い合わせ、予約が必要な場合は予約して出かけましょう。
まとめ
特別支援学校は、それぞれのニーズに合わせた手厚い支援を行ってくれる学校です。
小学部からエスカレーター式に高等部まで通うこともできますし、途中から通うこともできます。
特別支援学級と似ていますが、学ぶ目的、クラス編成や教員の資格、送迎の方法など、大きく違いがあります。
卒業後、社会の中で自立して生きていけるように、身の周りの自立や就労に向けた支援に力を入れているのも魅力です。
特別支援学校に入学するためには、就学相談を受けなくてはなりません。
子供の進路として視野に入れている方は、ぜひ学校見学や説明会に足を運んでみて下さい。