「うちの子、首を左右によく振るのだけど何かあるのかな?」
「目をパチパチしているけど、気になるなぁ」
幼児~中学生くらいの子でこのような挙動を繰り返す場合、チック症の可能性があります。
この記事では、チック症の概要から原因、対処方法やチック症に関する疑問点などを解説します。
もしかしてうちの子はチック症かも…と感じた時に参考にしてください。
チック症とは
チック症とは神経疾患のひとつです。
4~7歳の幼児期から起こり始めることが多く、症状は一見癖のようにも見えます。
それではまず初めに、チック症に関する5つの疑問とその回答を解説します。
それではひとつずつ見ていきましょう。
1.チック症の原因は?
チック症の原因ははっきりとは解明されていません。
しかし脳の一部である「線状体」という部分の異常で、ドーパミンの過剰放出が関係していると言われています。
これは遺伝も関係していることが多いと考えられています。
2.チック症はどんな症状が出るの?
チック症の症状は2つの症状に分類されます。
ポイント
- 運動チック
- 音声チック
まず運動チックですが、その名の通り動作に関する症状です。
例えば、まばたきを繰り返したり、何度も首をぶんぶん振ったりするのが、症状のひとつです。
注意して見ておかないと遊んでいるのかな?と思ったり、ただの癖と思ったりするかもしれません。
次に音声チックですが、咳払いを何度もしたり「あー」や「ひー」などの意味不明な言葉や発言を反復したりします。
卑猥なことばを投げかけることも症状のひとつ。
運動チック、音声チックともに本人の意思とは関係なく、何度も繰り返して起こるのが特徴です。
なお睡眠時には症状は出ません。
3.チック症を発症するのは何歳くらい?
チック症は2歳~18歳の間に発症します。
その中でも4~7歳の幼児期に最も多く発症するようです。
また傾向として、女児よりも男児のほうが発症しやすいといわれています。
なお発症する割合ですが、子どもの10%~20%の割合なので、よくある病気と言えるでしょう。
4.チック症は治る?
チック症の症状はほぼ消失します。
発症者全体の9割は数週間から数か月程度で症状がおさまるようです。
5.チック症になるのは子どもだけ?
チック症の症状はほぼ18歳までに消失しますが、まれに症状が長期化することもあるようです。
また一度治ったものの、環境の変化や体調を崩したときになどに再発するケースも確認されています。
なおチック症は「18歳未満で発症したもの」と定義されています。
そのため大人になってから初めて症状が出た場合は、チック症ではなく別の病気などが考えられます。
チック症かな?と思ったら
「もしかしてうちの子はチック症かもしれない…」
よくある病気なので、そう思うことが出てくるかもしれません。
そのような時は厚生労働省より「吃音、チック症、読み書き障害、不器用の特性に気づく「チェックリスト」活用マニュアル」(P5,P6)が公開されていますので参考にしてください。
参考:吃音、チック症、読み書き障害、不器用の特性に気づく「チェックリスト」活用マニュアル
また以下に病院に行く際の目安や治療方法まどをまとめました。
それではひとつずつ見ていきましょう。
病院にいく目安
病院に行く目安としては、症状が1年以上続いた時です。
チック症のほとんどが数週間から数か月で自然に消失するため、基本は様子見しましょう。
ただし日常生活に支障が出るほど症状が重い場合は、発症してから1年経っていなくても病院へ相談してください。
様子見するのか、治療するのか、先生が適切な判断を行ってくれます。
病院は「小児科」または「小児精神科」を選ぶ
子どもの場合、何科に行くか迷うこともあるでしょう。
病院へ行く場合「小児科」または「小児精神科」に行くとよいです。
まずはかかりつけ医、もしくはお近くの小児科や小児精神科に相談してください。
チック症の治療方法
チック症治療は、以下の4つが行われます。
- 1.カウンセリングおよび環境調整
- 2.認知行動療法
- 3.薬物投与
- 4.外科治療
1.カウンセリングおよび環境調整
チック症の治療として、まずはカウンセリングと環境調整が行われます。
具体的に何をするかというと、どこでストレスがかかっているかを調べ、できる限りストレスがかからない生活ができるよう環境を整えます。
もしかしたらチック症に理解がない人が身近にいて、それがストレスになっている可能性もあります。
また不安や緊張から症状が出ることもあります。
そのためできる限りストレスを取り除けるよう働きかけるのが、この環境調整です。
2.認知行動療法
こちらも目的はストレス軽減です。
環境調整では親など周りの人が環境を整えるのですが、認知行動療法は子ども本人に対して行われる療法で、子どもの考え方や行動に焦点を当てる心理療法です。
お医者さんが課題等を子どもに渡し、日常生活上で子どもは伝えられたことをこなしていきます。
手法は多岐に渡るため「これをする」という決まりはないのですが、逆を言えば子どもひとりひとりの症状に合わせて治療が行われます。
3.薬物投与
チック症はドーパミンが過剰に出ることが原因と考えられているため、ドーパミンを抑制する薬物を投与される場合もあります。
ただし薬物投与はまず環境を先に整えたり、認知行動療法を行った後に行われます。
また注意欠陥・多動性障害など他の症状が強く出た場合にも行われるようです。
4.外科治療
脳内に電極を埋め込み電流を流す「深部脳刺激療法」と呼ばれる手術を行う方法もあります。
ただしこの手術を行うのは重症の場合のみで、ほとんどの場合は上記1,2の方法で治療が行われます。
チック症に関する間違った考え方
チック症の原因はまだ解明されていませんが、近年の研究で脳の一部が関係しているということがわかってきました。
しかしまだ昔の名残や思い込みなどで、間違った考え方を持ったり偏見の目で見たりする人もいます。
特に多いのが「症状が出るのは、親の育て方が悪い」や「愛情不足」というもの。
「育て方が悪いから子どもが変な挙動をする」と今でも信じている人から、偏見の目で見られることもあるかもしれません。
また知識がないがために「育て方が悪い」「愛情不足」と聞き、落ち込む人もいるかもしれません。
しかしチック症と育て方・愛情は関係ありません。
脳からドーパミンが過剰に放出されているのが原因と言われていますので、落ち込む必要はありません。
チック症と発達障害の関係
「音声チック」の症状と「運動チック」の複数の症状が1年以上続いた場合、「トゥレット症候群(トゥレット障害)」と診断されます。
このトゥレット症候群はチック症の一部ですが、日本においては発達障害の定義にも含まれます。
そのため症状によっては障害者手帳を取得できるケースもあります。
また発達障害情報・支援センターのホームページで公開されている資料「トゥレット障害を含むチック障害」において、トゥレット症候群は高確率で以下の疾患を併発すると報告されています。
- 強迫性障害(OCD)
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
チック症の症状が重い場合や長期化した場合は、発達障害の検査も併せておこなうことをおすすめします。
気になる場合、まずは小児科または小児精神科の先生に相談しましょう。
まとめ
多くは幼児期~中高生の時に発症するチック症。
このチック症について、以下のポイントを覚えておくといいでしょう。
ポイント
- 症症状として、同じ挙動を繰り返す「運動チック」と意味不明な単語などを反復する「音声チック」がある
- チック症の症状が出る割合は、子どもの10%~20%
- 多くは数週間~数か月で症状がおさまる
- 症状が1年以上続いた場合や、日常生活に支障が出る場合は病院で相談する
- 小児科または小児精神科を選ぶ
- まれに大人になっても症状が残ることもある
- 「育て方が悪い」「愛情不足」が原因ではない
チック症の症状が出ても多くは数週間~数か月で症状がおさまります。
そのためまずは様子見しましょう。
チック症の症状が出る割合としては決して低くありません。
慌てず落ち着いて対処することが大切です。
なお、なかなか症状がおさまらない場合や、日常生活に支障が出る場合は病院での相談をおすすめします。