妊娠・出産が喜ばしいことなのはもちろんですが、ママのワンオペ育児だと先が不安になりますね。
同様に、もっと積極的に育児参加したいと思うパパもいるでしょう。
そういった場合には、パパが育児休暇を取ることをおすすめします。
パパの育児参加だけでなく、ママのキャリア形成といった意味合いでも、パパの育休取得は有効だといえるでしょう。
この記事では、男性の育児休暇取得について解説します。
男性でも育休が取れるのか、取得率はどれくらいなのか、男性育休の現状をチェックしてみましょう。
育児休暇は男性も取得可能!男性育休の基本を知ろう
育児休暇に関しては、育児・介護休業法で定められています。まずは、育児休暇の基本的な部分から見ていきましょう。
産休と育休は違う
産休と育休は取得できる時期が違うだけで、似たようなものだと考えている人もいるのではないでしょうか?
産休と育休は全く別物です。
産休の正式名称は「産前産後休業」といい、産前と産後に分かれています。
産休は母体の保護が目的ですので、女性しか取れません。
対して育休は、1歳未満の子供を育てる労働者であれば、性別に関係なく取得できます。
そして、育休の正式名称は「育児休業」です。
「育児休暇」だと育児・介護休業法の範囲外だと見なされる可能性もありますので、会社に申請する際は言葉選びに気を付けましょう。
制度についての正式名称は育児休業ですが、この記事ではわかりやすくするため、以降も育児休暇という言葉で説明します。
育児休暇は申請しなければ取得できない
育児休暇を取得する権利は男性にもありますが、取得するためには会社に申請する必要があります。
女性の場合、出産翌日からの8週間は、産後休業として本人の意思にかかわらず働くことができません。
ただし、本人が希望して医師が認めれば、産後6週間で産後休業を切り上げられます。
産後休業が強制的な休みなのに対して、産前休業と育児休暇は、申し出なければ取得できません。
産後休業が強制のため、その流れで女性の方が育児休暇を取りやすいのは確かです。
しかし、先ほどお伝えしたとおり、男性でも育休は取得できます。
会社側が男性育休を勧めるケースは少ないと考えられるため、育児休暇を取りたいと考えていることや手続きについて出産前から相談しておきましょう。
育休中は育児休業給付金が支給される
独自の制度を設けて育休中に給与を支払う会社もありますが、多くの場合は会社からの給与は支給されません。
その代わり、育休期間中には雇用保険から育児休業給付金が支給されます。
育児休業給付金は、育休スタート時から6カ月までは給与の約67%、7カ月目以降は給与の約50%の支給です。
ただし、育児休業給付金には上限額が決まっているため、給与がいくらであっても上限額以上にはもらえません。
ポイント
上限額は以下のとおりです。
- 上限額(支給率67%):304,314円
- 上限額(支給率50%):227,100円
そして、育休期間中は社会保険料が免除されます。
給与の50%~67%の支給額だと心もとないと思うかもしれません。
しかし、給与から引かれていた社会保険料がなくなり、所得税は非課税ですので、実際には手取り額の80%ほどは支給されます。
また、育児休暇期間に子供が保育園に入れなかった場合、最長2歳まで育児休暇を延長可能です。
延長した場合、育児休業給付金の支給期間も延長となります。
実際のところ、男性は育児休暇を取得できている?
それでは、世の中のパパは、実際にはどのくらい育児休暇を取得できているのでしょうか。
男性の育児休暇取得率は6.16%
厚生労働省の調査によると、2018年における男性の育児休暇取得率は6.16%でした。
女性の取得率は2018年が82.2%で、2007年以降から80%台で推移しています。
単純な取得率だけで見ると、男性と女性には大きな差があるのが現状です。
しかし、男性の育児休暇取得率は、2007年の1%台から2016年3.16%、2017年5.14%と、低めながら右肩上がりに上昇しています。
参考:男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について|厚生労働省
男性の育児休暇は1カ月未満が83%
育児休暇をどのくらい取るかは人によって異なりますが、取得日数においても男女差が大きくなっています。
厚生労働省によると、育児休暇を取得した女性の88%は6カ月以上を取得しています。
対して男性は、1カ月未満が83%で、そのうち56.9%は5日未満です。
5日未満の育児休暇は、本格的に育児を行うための休みというよりも、ちょっとしたお手伝いの範囲ではないでしょうか。
ママの体調が思わしくないときにパパが育児休暇を取ってくれるのは心強いことですが、本格的な育児参加を望むならもう少し日数が欲しいところです。
参考:男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について|厚生労働省
出世に響く?男性が育児休暇を取ることへの不安
男性の育児休暇取得率が低いのは、パパの気持ちや夫婦の意向だけが原因ではありません。
育児休暇の利用を希望しながらも実際は利用できていない男性が35.3%いるという調査結果があります。
育児休暇を利用しなかった理由としては、
- 業務が繁忙で職場の人手が不足していた
- 会社で育児休暇制度が整備されていなかった
- 育児休暇を取得しづらい雰囲気だった
- 自分にしかできない仕事や担当している仕事があった
- 収入を減らしたくなかった
などが挙げられています。
収入面の問題を別にすれば、男性の育児休暇取得率は、会社の雰囲気や状況に左右されると考えられるでしょう。
会社に育児休暇を取得しやすい雰囲気があるかどうか尋ねた調査では、取得しやすい雰囲気があるとの回答は女性が79.3%、男性が25.2%でした。
女性の場合は、出産の当事者であることや、強制的な産後休業があることから、産後休業に続けて育児休暇を取得しやすい環境です。
その一方で、まだまだ男性が育児休暇を取得しやすい環境にあるとはいえません。
男性が育児休暇を取りにくい雰囲気がある理由としては、男性の育児参加に対する理解が追い付いていないことが挙げられます。
そのため、会社に男性が育児休暇を取ったときのフォロー体制ができておらず、結果的に、人手不足から育児休暇を諦めるケースがあるのです。
参考:男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について|厚生労働省
参考:仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業|厚生労働省
育児休暇の詳細を知ってる?男性の権利もしっかりチェック!
育児休業は男性でも取得できること、そして、育休期間中は給付金が支給されることが分かりました。
加えて、育児休暇には、男性の育児参加を促すためにパパだけの特例もあります。
パパが育児休暇を取得することでどのような制度を利用できるのか、詳細をチェックしておきましょう。
パパ・ママ育休プラス
パパ・ママ育休プラスは2010年に始まった制度です。
育児休暇を取得できるのは子供が1歳になるまでですが、パパもママも育児休暇を取得する場合、取得できる期間が1歳2カ月までに延長されます。
パパ・ママ育休プラスを利用する要件は以下の3つです。
- 1歳の誕生日前日までに配偶者が育児休暇を取得している
- 本人の育児休暇スタート日が1歳の誕生日より前
- 本人の育児休暇スタート日が配偶者の育児休暇初日より後
例えば、ママが産後休業からそのまま育児休暇に入って1歳になるまで休むとします。
その場合、パパが生後8カ月から1歳2カ月まで育児休暇を取ると、1歳まではパパとママが一緒に育児を行えます。
ママが仕事復帰するときには、育児に慣れてきたパパがしっかりフォローできるでしょう。
パパとママが同時に育児休暇を取得すれば、慣れない育児にバタバタする新生児期に夫婦そろっての対応が可能です。
子供が夜まとめて寝るようになるまで、夜の授乳やミルクを交代で行えば、パパもママも睡眠時間を確保できます。
また、パパとママの育児休暇期間は、連続していなくても構いません。
双方の両親が子供を見てくれる期間がある場合、ママが生後6カ月まで、パパが1歳から1歳2カ月まで育児休暇を取るといったパターンも可能です。
パパとママが交代で育児休暇を取るのもよいですし、パパママ両方が自宅にいる環境を作るのもよいですね。
夫婦の状況に合わせて、それぞれが育児休暇を取得するタイミングを考えてみましょう。
パパ休暇
育児休暇の取得は、原則として1回限りです。
しかし、ママの産後休業中にパパが育児休暇を取った場合、パパは再び育児休暇を取得できます。
パパ休暇における育児休暇の再取得に特別な事情は必要ありませんが、産後8週間以内に1回目の育児休暇が終了している必要があります。
育児休暇を取りたい時期が決まっていたとしても、ママの体調によっては退院後にケアが必要となるかもしれません。
パパ休暇の制度を利用すれば、産後のママをしっかりフォローできるでしょう。
産後3週間はママをゆっくり休ませたい時期。
パパ休暇を積極的に利用して、3時間おきの授乳やミルクが必要な新生児期に、夫婦で協力して育児をしましょう。
ただし、パパ休暇を利用しても、育児休暇を取得できる最大日数が1年間ということに変わりはありません。
育児休暇を取るタイミングについて、夫婦でしっかり話し合っておきましょう。
育休取得による不利益取扱いの禁止
育児・介護休業法では、育休取得による不利益取り扱いが禁止されています。
会社は、妊娠・出産、育児休暇の取得を理由に、解雇や降格、減給などを行ってはいけません。
賞与の査定や人事考課において不利益な評価も禁止事項です。
つまり、男性が育休を取得したから出世できないのは違法だということです。
妊娠や出産、そして育児休暇取得を理由とする嫌がらせは、マタニティハラスメントだけではありません。
男性の育児参加や育休取得が注目されてからは、男性の育児休暇を邪魔したり嫌がらせをしたりするパタニティハラスメントも増えています。
育児・介護休業法の改訂によって、マタハラ・パタハラなどの防止措置が新しく会社に義務付けられました。
具体的には、方針を明確にして周知することや、相談窓口の設置といった体制作りが挙げられています。
会社の姿勢がはっきりすることによって、男性も育児休暇を取得しやすくなるでしょう。
男性が育児休暇を取りやすくするためにはどうする?
それでは、パパが育児休暇を取りやすくするためにはどうしたらよいのでしょうか。会社を変える方法と自分たちが変わる方法についてお伝えします。
育児休暇が取りやすい雰囲気に会社を変える
会社を変えるために有効なのは、育児休暇を取得する権利だけでなくメリットを伝えることです。
また、育児休暇中は自分の業務を引き継ぐ必要がありますので、日頃から良好な人間関係を心掛けましょう。
会社のメリットになる子育てパパ支援助成金をアピール
育休を取得する初めての男性となる場合には、会社にもメリットがあると伝えるのも有効です。
仕事と家庭の両立を目指す助成金には、男性の育児休暇取得を促進するための「子育てパパ支援助成金」があります。
男性が育児休暇を取りやすい環境作りに取り組み、実際に男性が育児休暇を取ると一定金額が支給されます。
対象となるのは、出生後8週間以内に男性が連続14日以上の育休を取得した場合です。
1人目の育休取得者に対する支給額は以下のとおりです。
- 中小企業:57万円(72万円)
- 中小企業以外:28.5万円(36万円)
会社の生産性が伸びていた場合には、かっこ内の割り増し金額が支給されます。
また、事前に取得を後押しする取り組みがあった場合は、さらに加算があります。
男性の育児休暇取得について自らプレゼンし、育休を取りやすくするために会社の雰囲気を変えていきましょう。
育児休暇を希望する男性社員の声を集める
厚生労働省は、男性育休の取得を促進するために「イクメン企業アワード」を実施しています。
受賞企業は、
- 育児に対する手当
- 数日間の育児休暇(有給)
- 複数の勤務時間帯
といった独自の取り組みを行っていました。
そういった取り組みは、育児中の社員に対するアンケートやヒアリングによって希望されるケースが多く、社員の意思確認を行うことも男性育休を促進するために役立ちそうです。
会社としての体制が整っていないから言い出しにくいだけで、育児休暇を取りたいと考える男性はほかにもいるかもしれません。
そういった男性育休希望者の意見を取りまとめることも、会社を変えることにつながるでしょう。
育児中にパパに望むことを、女性社員から聞き出してまとめるのもよいですね。
イクメン企業アワード受賞企業では、育休取得率だけでなく、離職率の低下といった効果も見られています。
勤務時間や勤務形態を選択できるようにしたり、業務効率化を図って休める状況を作り出したりするなど、男性が育児休暇を取りやすく改革することは、どの立場の社員にとっても働きやすい環境になるということです。
男性育休の問題だけでなく、会社として改革できる要素を探してみましょう。
育児休暇中の業務フォローを行う
単に「育児休暇を取りたい」といっても、会社の繁忙期や、自分にしか分からない業務がある場合は嫌な顔をされてしまうかもしれません。
そうならないためには、日頃から自分の担当業務や考えをオープンにしておく必要があります。
自分の業務内容を説明した引き継ぎ書を作っておくのもよいですね。
何よりも、自然とサポートしたいと思ってもらえるように、日常的に職場でしっかりコミュニケーションを取っておきましょう。
また、育児休暇中であっても、月10日以下もしくは80時間以下であれば仕事をすることが認められています。
もちろん、育児休暇中ですので育児が最優先です。
しかし、育児が必要ないタイミングで臨時的に働く場合であれば、育児休業給付金も支給されます。
テレワーク環境を整え、何かあったら対応すると伝えると、育児休暇が受け入れられやすいでしょう。
働き方を見直し自分たちが変わる
会社の雰囲気が変わらない場合には、自分たちが変わることを考える必要があります。
例えば、より働きやすい会社へ転職するのも一つの方法です。
パパやママの職種によっては、独立して在宅で仕事をしやすいフリーランスになる選択肢もあります。
家事はできるだけ外注するといった工夫も必要でしょう。
また、育児・介護休業法には、「子の看護休暇」があり、小学校に入学する前の子供がいる場合、子供を看病するために1年間に5日まで休暇が取れます。
子の看護休暇は、予防接種や健康診断を受けさせるためにも取得可能ですので、ママだででは対応できないときにパパが休みを取るのもよいですね。
ほかに子供がいる場合や親の手助けが期待できる場合など、家庭によって事情は違います。
パパが育児休暇を取るかどうかだけでなく、パパが育休を取らないことで育児やママのキャリアがどうなるのか、夫婦の生涯賃金などをトータルで考えましょう。
まとめ
男性でも育児休暇は取得可能です。
育児と家庭の両立を目指し、国としても男性の育児休暇取得を促進しています。
実際に、パパとママが両方とも育休を取得する場合には、育休取得期間が1歳2カ月まで延長される「パパ・ママ育休プラス」といった制度もあります。
しかし、その一方で、右肩上がりに伸びているとはいえ、男性の育児休暇取得率は6%に留まっているのが現状です。
男性育休がまだ理解されにくい状態にあり、育休取得のためには会社の雰囲気から変えなければならないケースもあるでしょう。
そのためには、男性育休の権利だけを主張するのではなく、会社のメリットを含めて提案してみることをおすすめします。
男性の育休取得に一定金額が支給される「子育てパパ支援助成金」もありますので、助成金の話を含めて提案すれば、育休取得も受け入れてもらいやすいでしょう。
また、普段から会社の人とコミュニケーションを取り、育休取得時にサポートしてもらえる関係性を築いておきたいですね。